点検 2024.06.25

建築設備に必要な点検「建築設備定期検査」とは?検査内容や費用を詳しく解説

#12条点検#建築設備定期検査

最終更新:2024.06.25

マンションやビルなどの特定の建設物には、「建築設備定期検査」の実施が法律で定められています。

 

対象となる建設物を所有している方のなかには、建築設備定期検査の点検項目や流れ、費用相場などがわからず悩んでいる方もいるでしょう。

 

そこで本記事では、建築設備に必要な点検である建築設備定期検査について解説します。ぜひ最後までご覧ください。

 

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建築設備定期検査とは?

 

「建築設備定期検査」とは、特定の建築物の安全性と機能性を確保するために法律で義務付けられた点検制度です。

 

対象となるのは、学校、病院、商業施設など、不特定多数の人が利用する床面積200㎡以上の建築物です。

 

主な点検項目は、給排水や排煙、換気、非常用照明装置などです。

 

建物利用者の安全性や快適性を維持する目的のほか、地震や火災などの自然災害が起こったときにきちんと建設設備が作動するか確認しておくことで、利用者を守る目的も含まれています。

 

建築基準法第12条では、以下の4つの定期検査が義務付けられており、建築設備定期検査なそのうちの一つにあたります。

  • 特定建築物定期調査
  • 建築設備定期検査
  • 防火設備定期検査
  • 昇降機等定期検査

 

つまり、建築設備定期検査は任意で実施するものではなく、建築基準法第12条で実施・報告が義務付けられており、適切な実施を怠ると罰則の対象となる可能性もあるため、きちんと検査を実施しなければなりません。

 

関連記事:12条点検とは?対象や詳しい検査項目などを解説

 

関連記事:特定建築物定期調査とは?対象の建物や調査内容・注意点を解説

建築設備定期検査の基礎知識

「建築設備定期検査の実施が義務化されているのはわかったけれど、対象となる建物の種類は何?」

「建築設備定期検査の点検には資格が必要なの?」

といった疑問を持っている方も多いでしょう。

 

ここでは、建築設備定期検査の基礎知識について解説します。

 

建築設備定期検査を行ううえで必要な資格

建築設備定期検査を行うには、以下の資格のいずれかが必要です。

 

  • 一級建築士
  • 二級建築士
  • 建築設備検査員

 

建築設備定期検査は、建築物の安全を守る重要な検査であるため、誰でも実施できるわけではありません。

 

建築設備定期検査は建築物の安全を守る重要な検査であるため、専門知識が必要です。

上記の資格を持っている作業員が点検を実施し、特定行政庁に定期報告を行います。

 

なお、特定行政庁への定期報告は決まった周期で実施しなければならないため、建物の管理者は点検周期に合わせて点検を実施できるよう業者への依頼を進めましょう。

建築設備定期検査が必要な建物の種類

建築設備定期検査は、建築基準法で「特定建築物」として指定された不特定多数の人が利用する建築物が対象となります。

 

建築基準法第2条によると、「特定建築物」は以下のとおりとなっています。

 

特定建築物

学校(専修学校及び各種学校を含む。以下同様とする。),体育館,病院,劇場,観覧場,集会場,展示場,百貨店,市場,ダンスホール,遊技場,公衆浴場,旅館,共同住宅,寄宿舎,下宿,工場, 倉庫,自動車車庫,危険物の貯蔵場,と畜場,火葬場,汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物をいう。

 

引用元:建築基準法第2条|e-Gov法令検索

 

特定建築物のうち、その用途に使う部分の床面積が合計200㎡以上の場合、建築設備定期検査の対象となります。

 

ただし、特定建築物は国が政令で指定している建築物のほか、全国の特定行政庁が指定しているものもあります。特定行政庁が独自の基準で定めている特定建築物もあるため、物件の所有者はエリアごとの情報も確認するようにしてください。

建築設備定期検査の点検項目

建築設備定期検査は特定建築物に該当しており、以下の4つの設備を備えた建築物にたいして実施されます。

 

  • 換気設備
  • 排煙設備
  • 非常用の照明設備
  • 給排水設備

 

ただし、法令上で4つの設備に対する内容や条件は定められておらず、特定行政庁によって取り扱いが異なる場合があるため、地域ごとの規定を確認することが重要です。

 

特定行政庁によっては、細かく内容や条件を指定している場合があるため、建築設備定期検査を実施するときに特定行政庁のホームページや通知書の内容を確認するようにしてください。

換気設備

換気設備とは、給気・排気を機械的に行い、建物内の空気を循環させる設備のことです。

 

建物内の空気を適切に循環させることで、二酸化炭素や一酸化炭素、ハウスダストなどを含む建物内の汚れた空気と室外の新鮮な空気を入れ替え、建物内をきれいな空気に保つ効果があります。

 

換気設備の検査では、換気システムが適切に作動しているかチェックするのが基本の内容です。たとえば、換気設備の配置や換気扇の動作チェックを始め、換気システムの風量測定などが挙げられます。

 

また、火災発生時に作動する防火ダンパーの点検も換気設備の点検項目に含まれます。

排煙設備

排煙設備とは、火災が起こったときに発生した煙やガスを屋外に排出する設備のことです。排煙設備には「自然排煙設備」と「機械排煙設備」の2種類があります。

 

  • 自然排煙設備:建築物の天井付近に取り付けられた窓のことを指す。煙は上にあがる性質があるため、天井付近に窓を設置することで煙を外に逃がす。
  • 機械排煙設備:天井付近に取り付けられた換気扇のことを指し、機械的に煙を吸って屋外に排出する。

 

排煙設備の検査では、排煙機の動作確認や屋外に排気する風量の測定、排煙口、排煙経路などの確認が行われます。

 

常に使用する設備ではないため不具合に気が付きにくいですが、万が一、火災が起こったときに建物利用者の安全を守る重要な設備となるため、建築設備定期検査を通してしっかりと点検することが大切です。

非常用の照明設備

非常用の照明設備とは、非常灯、非常用照明などと呼ばれるものであり、地震や火災などで常用電源が使えなくなったときに使用する照明設備です。

 

非常用の照明設備があることで、常用電源が使えなくなったときに周囲の状況や避難経路が確認しやすくなります。また、災害時の救助活動や消火活動もしやすくなるため、重要な設備であるといえるでしょう。

 

非常用の照明設備の検査では、照明器具の設置場所や動作確認が行われます。さらに、照度測定によって明るさが十分であるかもチェックします。

給排水設備

給排水設備とは、建物に水を供給したり、建物内の水を屋外に排出したりする設備を指します。

 

  • 給水設備:水道管から建物に水を供給する設備。給水管、高架水槽、給水ポンプ、給湯設備など。
  • 排水設備:建物で使用した水を下水道に排出する設備。排水管、通気管、排水槽、排水ポンプなど。

 

給排水設備の点検では、設置場所に問題はないか、運転に異常はないか、腐食や漏れはないかといったことが調査対象となります。

 

給排水設備に異常があると、建物利用者の健康被害が発生する可能性があるため、重要な検査となります。

 

建築設備定期検査の流れ

建築設備定期検査の時期になると、建築物の所有者・管理者宛に通知書が届きます。

 

しかし、建築設備定期検査を実施したことがない場合、

「通知書が届いたけれど、どのような流れで建築設備定期検査を進めたらよいのかわからない」

という方もいるでしょう。

 

ここでは、建築設備定期検査の基本的な流れについて解説します。

検査通知書が届く

建築設備定期検査の時期になると、建築物の所有者・管理者宛に特定行政庁から検査通知書が届きます。

 

通知書が届いているにもかかわらず、検査を実施しなかったり、虚偽の報告をした場合、罰金が課せられるケースもあるためきちんと実施しましょう。

 

ただし、特定行政庁によっては通知書が届かないこともあるため、所有者・管理者が責任を持って建築設備定期検査の実施時期を確認しておくことが大切です。

検査を依頼する業者を探す

建築設備定期検査の通知書が届いたら、検査を依頼する業者を選びましょう。

 

建築設備定期検査の実施が初めてで依頼先探しから行う場合は、以下のポイントを踏まえて業者探しをするのがおすすめです。

 

  • 建築設備定期検査の実績が多い
  • 社歴が長く、従業員が多い
  • レスポンスが早い
  • 対応が丁寧

 

また、業者選びが初めての場合は、相見積もりを取って複数の業者を比較するのもおすすめです。

 

複数の項目から、信頼できる1社を選んで依頼するようにしましょう。

必要書類をそろえる

依頼先の業者が決まったら、必要書類をそろえて業者に提出しましょう。

 

初回の建築設備定期検査では、報告書に建築物の所有者・管理者情報を記載するために、以下の書類が必要となります。

 

【初回の建築設備定期検査で必要な書類】

  • 確認済証
  • 検査済証
  • 建築平面図
  • 設備図面(非常照明、換気設備、給排水設備、機械排煙設備)
  • 面積記載図

 

【2回目以降の建築設備定期検査で必要な書類】

  • 前回の報告書
  • 建築平面図

 

初回の建築設備定期検査では書類準備についてもわからないことが多くなりがちであるため、どのような書類を準備すべきかといったことまで丁寧にサポートしてくれる業者に依頼するのがおすすめです。

検査を実施する

書類の提出が終わったら、建築設備定期検査が行われます。

 

建築設備定期検査はすべて業者が実施するため、所有者・管理者が検査を実施することはありません。

 

しかし、業者から建物について質問されることがあるため、すぐに対応できるようにしておきましょう。

報告書を確認・押印して特定行政庁に送付する

検査が終わると業者が作成した報告書が届きます。

 

査報告書は建築物の所有者・管理者に届くため、内容を確認して押印し、検査会社に返送しましょう。

 

返送された検査報告書は、業者から特定行政庁に提出され、建築設備定期検査は終了となります。

 

また、特定行政庁によっては建築設備定期検査の報告済証が発行されるため、受け取ったら建物内の見やすい位置に掲示してください。

 

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建築設備定期検査の費用相場

建築設備定期検査の費用相場は以下のとおりです。

 

建築設備定期検査の費用に含まれるもの

  • 検査費
  • 報告書作成費
  • 提出代行費
  • センター手数料
  • その他

 

【建築設備定期検査の費用相場】

延床面積 共同住宅(マンション) その他の建設物
〜1,000㎡ 30,000円 30,000円
1,000㎡〜2,000㎡ 30,000円 35,000円
2,000㎡〜3,000㎡ 35,000円 40,000円

 

ただし、実施する業者によって料金設定が異なります。相見積もりを取るなどして、しっかりと相場を確認したうえで依頼先の業者を選びましょう。

 

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建築設備定期検査を行わなかったらどうなる?

建築設備定期検査は建築基準法で実施が義務付けられており、適切に実施しなければ罰則を課せられる可能性があります。

 

建築基準法において、罰則について以下のように記載されています。

 

【建築基準法 第七章 罰則 第百一条】

第十二条第一項若しくは第三項(これらの規定を第八十八条第一項又は第三項において準用する場合を含む。)又は第五項(第二号に係る部分に限り、第八十八条第一項から第三項までにおいて準用する場合を含む。)の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者

引用元:建築基準法第七章|e-Gov法令検索

 

このように、建築設備定期検査を適切に実施しなかったり、虚偽の報告をしたりした場合は、100万円以下の罰金が課せられる可能性があります。

 

また、建築設備定期検査を行わず、万が一のときに正常に設備が作動しなければ、人命に関わる可能性もあるでしょう。

 

そのため、一定の費用や時間はかかるものの、建築物の所有者・管理者の責任として建築設備定期検査をきちんと実施することが大切です。

 

建築設備定期検査はドローンによる点検も可能

建築設備定期検査は、ドローンによる調査も可能です。

 

従来の検査では、作業員が対象の設備を手作業で点検するのが一般的でした。しかし、最近では高性能なカメラを搭載したドローンを使って建築設備定期検査を実施するケースが増えています。

 

たとえば、足場が必要になる高所の設備や人が入りにくい場所などを、ドローンに搭載したカメラで撮影することで、効率的かつ高精度な調査が可能になるのです。

 

非接触で効率的な調査が可能になるため、建築設備定期検査にかかる費用や時間を短縮できたり、作業員の安全を確保しやすくなったりするメリットもあります。

 

今後、建築設備定期検査の実施を検討している方は、ドローンを使った調査の導入も視野に入れてみるのがおすすめです。

 

関連記事:12条点検はドローンで実施可能!メリットや注意点などを解説

 

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建築設備は建築設備定期検査で適切に点検しよう

今回は、建築設備の建築設備定期検査について解説しました。

 

特定建築物に該当する建物は、建築基準法で建築設備定期検査を実施するよう義務付けられています。

 

【建築設備定期検査の点検項目】

  • 換気設備
  • 排煙設備
  • 非常用の照明設備
  • 給排水設備

 

建築設備定期検査は必ず実施しなければならないものであるため、建築物の利用者の安全を守るためにも、適切に実施するようにしましょう。

 

なお、建築設備定期検査はドローンによる点検も可能です。ドローンを活用することで、従来の点検方法よりも費用や時間を削減できたり、高精度な調査ができたりする可能性があります。

 

ぜひ今回の記事を参考に、ドローン調査も視野に入れつつ、建築設備定期検査を進めてみてください。

 

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