点検 2023.11.15

12条点検とは?対象や詳しい検査項目などを解説

#12条点検

最終更新:2024.04.22

建築物には、法令で定められた点検業務を行う必要があり、建築基準法第12条に基づくことから一般的に「12条点検」と呼ばれています。

 

12条点検を正しく実施することが、建築物を安全で長く使える状態に保つことにつながります。しかし、検査の内容や検査項目、実施周期などを正確に把握していない方も多いでしょう。

そこで今回は、12条点検とは何かについて詳しく解説します。

12条点検とは?

12条点検とは、建築基準法第12条で定められている点検義務のことです。

 

対象となる建築物の所有者・管理者にとっては重要な制度ですが、検査の内容を細かく把握している方は少ないでしょう。

 

まずは、12条点検の概要や対象のエリア・建物などを詳しく解説します。

 

12条点検の概要

建築基準法の12条点検の目的は、建築物の安全性を確保することです。

 

建築物は時間が経つごとに劣化が進むため、点検やメンテナンスをしないまま放っておくと、倒壊や建築設備の動作不良など、さまざまな事故・トラブルを引き起こす可能性があります。

 

とくに、デパートや病院、ビル、ホテルなど、不特定多数の人が利用する建築物は、利用者の安全を守るためにも建築物の所有者・管理者が責任を持って検査・メンテナンスすることが求められます。

 

そこで、12条点検において建築物の点検義務を定めることで、安全性や適法性を維持しているのです。具体的には、専門の資格を有する調査員が建築物を定期的に検査し、所管の特定行政庁に報告するよう定められています。

12条点検の対象エリアと建物

12条点検は、すべての建築物が対象になるわけではありません。

 

対象となる建築物は「特定建築物」と呼ばれるものです。

 

建築基準法第2条によると、「特定建築物」は以下のとおりです。

 

「特定建築物」詳細

学校(専修学校及び各種学校を含む。以下同様とする。),体育館,病院,劇場,観覧場,集会場,展示場,百貨店,市場,ダンスホール,遊技場,公衆浴場,旅館,共同住宅,寄宿舎,下宿,工場, 倉庫,自動車車庫,危険物の貯蔵場,と畜場,火葬場,汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物をいう。

 

引用元:建築基準法第2条|e-Gov法令検索

 

特定建築物のうち、その用途に使う部分の床面積が合計200㎡以上の場合、12条点検の対象となります。

 

関連記事:特定建築物定期調査とは?対象の建物や調査内容・注意点を解説

 

ただし、地方自治体が独自に指定するものもあり、エリアによって対象となる建物が異なるため、建物がある自治体のホームページなどを見て確認するようにしましょう。

 

たとえば、東京都の場合は以下の条件に当てはまる場合、12条点検の対象としています。

学校、学校に付属する体育館で、床面積が2,000㎡以上のもの

3階以上の階にあって床面積が2,000㎡以上の博物館・美術館・図書館など

 

なお、12条点検の対象となる建物は、不特定多数の人を収容するという共通点があります。ビルやマンションを所有している方は、12条点検の対象となるのかあらかじめ確認しておくことが大切です。

 

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12条点検を行ううえで必要な資格

12条点検は誰でも実施できるものではなく、以下のいずれかの資格が必要となります。

 

12条点検の必要資格
  • 一級建築士
  • 二級建築士
  • 講習を受講して資格を得た検査資格者(特定建築物調査員、建築設備検査員、防火設備検査、昇降機等検査員)

 

一級建築士と二級建築士は講習不要で12条点検が実施可能です。

検査資格者の場合、「特定建築物調査員」「建築設備検査員」「防火設備検査」「昇降機等検査員」のうち、それぞれの講習を受講・合格しなければ検査を実施できません。

従来の12条点検の流れ

これまでに12条点検を実施したことがないなど、どのような流れで進めていくのかわからない方も多いでしょう。12条点検は、以下のような流れで行います。

 

  1. 12条点検の検査通知書が届く
  2. 検査を実施してもらう会社を選定する
  3. 検査会社に書類を提出する
  4. 依頼した検査会社が12条点検を行う
  5. 検査会社から送られてくる報告書を確認・返送する
  6. 検査会社が特定行政庁に報告書を提出する

 

12条点検の検査時期になると、管轄の特定行政庁から検査通知書が届きます。検査通知書が届いたにもかかわらず、検査を行わなければ罰則が課せられる可能性があるので速やかに実施してください。

 

なお、初回検査の場合、以下の書類を検査会社に提出する必要があります。

  • 確認済証
  • 検査済証
  • 建築平面図
  • 設備図面
  • 面積記載図
  • 消防設備点検報告書

 

そして、検査実施後、検査会社から報告書が送られてくるので、中身を確認して検査会社に返送します。その後、検査会社が特定行政庁に報告書を提出して完了となります。

12条点検の検査項目

これまで12条点検の概要について解説しました。では、実際にどのような箇所を点検するのでしょうか。

 

12条点検の検査項目は以下の4つに大別できます。

  • 建築物
  • 防火設備
  • 建築設備
  • 昇降機

 

それぞれの検査項目を詳しく見ていきましょう。

建築物

建築物の検査項目は以下の6つに分類できます。

 

点検項目 点検部位の例
敷地・地盤 地盤、敷地、通路、塀、配電塔、電力等引込柱
建築物の外部 建物の基礎、外壁、窓サッシ
屋上・屋根 屋根、屋上、高架水槽などの機器
建築物の内部 壁、床、天井、仕上げ材、照明、換気設備
避難施設 廊下、出入り口、階段、手すり、避難バルコニー
その他 煙突などの特殊な部位

参考:国土交通省 |告示「建築物の定期調査報告における調査及び定期点検における点検の項目、方法及び結果の判定基準並びに調査結果表を定める件」

 

たとえば、敷地・地盤の点検項目では、地盤が陥没していないか、敷地内の雨水の排水が問題なく行われているかなどがチェックされます。

 

点検方法は、目視やハンマーによる打診、設計図の確認などを用いて行われます。

防火設備

防火設備の点検項目は、以下の4つです。

 

  • 防火扉
  • 防火シャッター
  • 耐火クロススクリーン
  • ドレンチャーの他の水幕を形成する防火設備

 

防火設備の点検は、防火設備自体が問題なく作動するかをはじめ、防火設備場所や周囲に動作をさまたげるものがないかなどを確認します。

 

たとえば、防火シャッターの周辺に物がたくさん置かれていて開閉できない状態になっている場合は、改善を求められるでしょう。

建築設備

建築設備の点検項目の4分類と、それぞれの細かな点検部位は以下のとおりです。

 

点検項目 点検部位の例
給排水設備 給水設備(受水槽・高架水槽・加圧給水配管など)

排水設備(汚水槽・排水管など)

換気設備 給排気口、空調設備、換気フード、防火ダンパー
非常照明設備 全ての非常照明機器
排煙設備 排煙機、排煙口、可動防煙壁

参考:国土交通省 |告示「建築物の定期調査報告における調査及び定期点検における点検の項目、方法及び結果の判定基準並びに調査結果表を定める件」

 

建築設備は、目視や触診を用いた検査に加え、巻尺や温度計による測定、機器類の動作チェックなどが行われます。

昇降機

昇降機とは、エレベーターやエスカレーターなどの設備を指します。

 

12条点検の対象となる建築物には設置されているケースが多く、目視や触診、聴診、測定、機器の動作確認などで検査が行われます。

 

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12条点検の実施周期

12条点検では、検査結果を定期的に報告するよう定められています。点検項目ごとの実施周期は以下のとおりです。

 

点検項目 初回点検のタイミング 2回目以降の点検周期
建築物 建物完成時に検査済証を受けてから6年以内 前回の点検から3年以内
防火設備

建築設備

昇降機

建物完成時に検査済証を受けてから2年以内 前回の点検から1年以内

 

ただし、こちらの点検周期は国が定めたものであり、ここからさらに細かな報告時期を管轄の特定行政庁が定めています。そのため、より詳細な報告時期については、管轄の特定行政庁のホームページを確認するようにしてください。

 

12条点検の費用はいくら?相場と金額を抑える方法を紹介

 

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12条点検の報告を行った場合の罰則

12条点検は、建物の所有者・管理者に課せられた義務であり、建築物の利用者の安全を守るためにも法令に従って必ず実施しなければならないものです。

 

もし、12条点検を実施しなかったり、適切な点検を行わなかったりした場合、100万円以下の罰金が課せられる可能性があります。

 

基本的に、2回目以降の点検は郵送で点検時期を知らせてくれますが、初回点検は郵送による案内が届きません。また、2回目以降も何らかの不具合で届かないことがあるでしょう。ただし、案内が届かなかったからといって、点検が不要になるわけではありません。

 

法令の内容をきちんと理解し、建築物の所有者・管理者が責任を持って点検時期を管理しましょう。

 

12条点検はドローンによる赤外線調査が可能に!

12条点検ではさまざまな点検項目があり、そのなかの外壁・屋根の調査でドローンを活用するケースが増えています。

 

ではなぜドローンによる赤外線調査が注目されているのか、どのように実施するのかなどを見ていきましょう。

ドローンによる赤外線調査が注目される背景

従来の外壁・屋根の点検といえば、目視調査やハンマーで叩いて異音を見つける打診調査が一般的でした。

 

しかし、打診調査の場合、高所作業による危険や時間・コストがかかることが問題視されており、さまざまなデメリットをカバーできるとしてドローン点検が注目されています。

 

ドローン点検であれば、ドローンに赤外線カメラを搭載して地上から操作するだけなので、手間やコスト、リスクを減らせます。

 

【従来の打診調査とドローンでの赤外線調査の違い】

ドローンでの赤外線調査 打診調査
足場 不要 必要
作業日数 短い 長い
費用 安い 高い
再現性 高い 安い

 

また、赤外線カメラを使った調査はこれまでも実施されていましたが、高層階になると精度が落ちるというデメリットがありました。

 

というのも、赤外線カメラで精度の高いデータを得るためには、壁面に対して垂直方向から撮影しなければならず、高層階になるほどカメラの角度が傾くことがハードルとなっていたのです。

 

しかし、ドローンを使って撮影する方法なら、赤外線カメラを壁面に対して垂直に保てます。

 

このように、打診調査、地上からの赤外線カメラのよる調査の両方のデメリットをカバーできることから、ドローンによる点検が注目されている背景があります。

 

関連記事:外壁の赤外線調査とは?打診調査との違いや費用について解説

ドローンによる12条点検はどのように行う?

ドローンによる12条点検は、対象の建築物を赤外線カメラで撮影して実施します。

 

たとえば、外壁がひび割れて雨水が建物に入り込んでいたり、外壁のタイルに浮きが生じたりしていると、一部分だけ温度が違うことがわかります。このように、赤外線カメラで外壁に生じる温度差から不具合を見つけていくため、精度の高い点検が可能です。

 

また、ドローンと赤外線カメラを使った外壁調査は、国土交通省の資料でも効果が認められており、信頼できる調査方法であることもポイントです。

 

ただし、12条点検に必要な点検項目のすべてをドローンで対応することはむずかしいため、一部の点検項目をドローンに置き換える方法が取られています。

 

ドローン点検の詳細については、以下の記事をご覧ください。

 

関連記事:12条点検はドローンで実施可能!メリットや注意点などを解説

 

 

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まとめ

今回は、12条点検について解説しました。

 

12条点検とは、不特定多数の人が利用する建築物について、定期的な点検を実施し、老朽化によって起こるリスクを軽減する目的で実施されています。12条点検の対象である建築物の所有者・管理者は、定められた内容に従って点検を実施・報告する義務があります。また、複数の点検項目のうち、外壁の点検をドローンで行うケースが増加しています。

 

12条点検にかかるコストや時間を効率化したいと考えている方は、ぜひ今回の記事を参考にドローンによる12条点検を検討してみてください。

 

また、ドローン業者に点検のお見積りやご相談を希望の方はお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

 

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