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日本には数多くのプラントがあります。経済産業省の「平成30年度石油・ガス供給等に係る保安対策調査等事業保安力の維持・向上を目的とする基礎調査報告書」によると、数百〜数千事業者がプラントを保有しているとされています。
しかし、プラントのなかには十分な点検・補修が実施できていないところもあり、保全問題を抱えているのが現状です。そこで、近年では問題解決のためにドローンによるプラント点検が注目されています。
本記事では、ドローンによるプラント点検を導入するメリットや活用事例、現状の課題などを解説します。ぜひ最後までご覧ください。
日本には数多くのプラントが存在していますが、プラントの多くは高度経済成長期に建設されたものです。設備の更新が行われているところもある一方で、設置以来、点検が行われていないところも少なくありません。
なぜなら、高所や狭所の多いプラントは、簡単に人が立ち入ることができず、なおかつ点検時に危険を伴うため、点検の実施が容易ではないからです。また、点検作業中はプラントを停止する必要があり、一時的に生産性が落ちることも問題となっています。
そこで、従来の手作業によるプラント点検の問題を解決できるとして、ドローン点検の需要が高まっています。プラント点検の需要が高まっている具体的な理由は以下のとおりです。
このように、従来のプラント点検ではむずかしかった箇所の点検が実施できるようになったり、点検時の安全性向上が期待できたりすることから、需要が高まっているといえます。
プラント点検でドローンを導入することで、具体的にどのようなメリットが期待できるのか見ていきましょう。
従来の点検方法では、作業員が直接プラントに触れたり、見たりして作業を進める必要があるため、一つのプラントに対して多くの作業員が必要です。
さらに、特殊車両が必要なケースも多く、その場合は多くの点検作業員に加えて、オペレーターや運転手、安全管理者、警備員なども配置しなければなりません。
しかし、ドローン点検であれば、ドローンの操縦者のほか数名だけで実施可能であり、作業員数を大きく削減できます。
ドローン点検は、従来のプラント点検と比較して作業時間やコストの削減が期待できることも大きなメリットです。
従来の点検方法の場合、足場や特殊車両の準備に時間やコストがかかるのはもちろん、数時間かけて小範囲しか点検できません。
しかし、ドローン点検であれば、足場や特殊車両を用意する必要がありません。さらに、作業員も数名で済むうえに、広範囲を短時間で点検できます。
このように、従来のプラント点検とドローンを活用した場合では、作業に必要な設備や工数、作業員に大きな違いがあります。
ドローン点検は、作業時の安全性向上が期待できることもメリットとして挙げられます。
プラントには以下のとおり、高所や狭所、高温・低温エリアなど危険な場所が複数あります。
このような危険な場所での作業が必要なうえに、転落や墜落のリスクも伴います。
しかし、ドローンを活用すれば作業員が直接プラントを点検する必要がなくなるため、命にかかわる事故のリスクを軽減できます。
ドローンを活用したプラント点検では、撮影したデータをAI解析したり、3Dモデリングを生成できたりします。
たとえば、AI解析を行うとデータ学習が行われ、損傷や劣化箇所の自動判定が可能です。
さらに、3Dモデリングによって、立体物としてデータを形成できます。
プラントによっては、紙の図面しかなかったり、図面が更新されていなかったりすることが点検や修繕計画実施のハードルとなっていました。しかし、ドローン点検を実施することで正確な立体物データを形成でき、より正確な劣化状況の把握や修繕計画立案に役立てられます。
ドローンを活用すると、プラントの点検履歴がデータとして蓄積されることもメリットです。
過去の正確な点検データをいつでもチェックできるようになるため、報告書の作成や点検情報のデータベース化など、プラントの維持・管理業務を効率化することにつながります。
プラントの維持・管理業務が効率化できれば、点検・保守業務のプロセスの最適化になるため、結果的に安全で効率的なプラントを維持できるという好循環になることが期待できます。
ドローンによるプラント点検は、従来の点検方法の課題を解決できたり、複数のメリットが期待できたりすることから、実際にドローンを使って点検を行う事例が増えています。
ここでは、ドローンによるプラント点検の活用事例を紹介します。
出光興産株式会社は、休止中の重油タンクの設備内部をドローンで点検する実証実験を行いました。
【実証実験の概要】
使用したドローン:Flyability社ELIOS、ELIOS2
飛行目的:非GPS環境及び目視外のマニュアル操縦により、タンク内部を安全にドローンを飛行できるかを確認するため
撮影対象:タンク内部(溶接線、ボルトの状態、配管が腐食していないかなど)
撮影方法: 静止画撮影/動画撮影
実施体制:操縦者、安全運航管理者、補助者(各1名)
【想定されるリスク】
こちらの実証実験では、非GPS環境であることと、目視外のマニュアル操縦による重油タンク内の点検であったことから、上のような3つのリスクが想定されていました。
結果として、想定していたリスクを回避しつつ、撮影対象として挙げていた溶接線やボルトの状態、腐食部位の確認など、表面的な状況確認は可能であることがわかりました。
しかし、表面状況の確認が可能であったが、現状はドローンではスケール量や腐食の深さまでは判断できない点が課題であると指摘されており、今後の改善が期待されます。
JSR株式会社では、以下の実証実験が行われました。
【実証実験の概要】
位置づけ
飛行目的:従来は危険区域だったためドローン飛行が実施できなかった区域で、ドローンを安全に飛ばせるのか(定期点検や日常点検に使うため)を確認するため。また、従来は危険区域に指定されていたため、特別な安全対策が必要なのかも検証する。
撮影対象:ポリブタジエン樹脂製造施設
撮影方法: 静止画撮影/動画撮影
実施体制:操縦者、監督者、検査員、異常時の制御室との連絡者(各1名)、風速監視員(2名)、交通監視員(4名)
【想定されるリスク】
こちらの実証実験では、もともと危険区域として指定されていたエリアでドローンを飛行させる点や、稼働中のプラント上空を飛行させる点などから、ドローンの墜落による設備の損傷、発火など複数のリスクが想定されていました。
想定されるリスクに対して十分な対策を取ったうえで、実証実験を実施したところ、人では点検したに箇所含め俯瞰的にプラントの状況を把握できることで、腐食や損傷箇所の状態を正確に診断・評価できることがわかりました。
また、人がプラント内に入らなければ確認できない箇所をドローンで点検できることもわかり、点検範囲を拡張できることや、プラントの停止時間を短縮できるなどさまざまな有用性が確認できました。
三井化学株式会社では、コーンルーフタンクの点検をドローンで行う実証実験を2021年に実施しました。
【実証実験の概要】
位置づけ
使用したドローン:ACSL Mini-GT3
飛行目的:従来は危険区域だったためドローン飛行が実施できなかった区域で、ドローンを安全に飛ばせるのか(定期点検や日常点検に使うため)を確認するため。また、従来は危険区域に指定されていたため、特別な安全対策が必要なのかも検証する。
撮影対象:コーンルーフタンク
撮影方法: 静止画撮影/動画撮影
実施体制:操縦者、監督者、検査員、異常時の制御室との連絡者(各1名)、風速監視員(1名)、交通監視員(1名)
【想定されるリスク】
こちらの実証実験では、従来の危険区域の内側でドローンを飛行させるため、さまざまなリスクが想定されていましたが、人が足場やゴンドラを使わなければ確認できない箇所までドローンで撮影できることがわかりました。
また、ドローンで撮影したデータをズームすると、実測した検査結果に近い損傷部の大きさを推定できることもわかり、今後の活用が期待できる結果となりました。
先に解説したとおり、さまざまな環境・状態のプラント点検でドローンが使われ始めており、今度も普及拡大が期待されていることがわかります。
しかし、ドローン点検はメリットや有用性が期待できる一方で、課題もあります。ここでは、ドローンによるプラント点検の今後の課題を見ていきましょう。
ひとえにプラントといってもさまざまな種類や構造があります。とくにプラントは塔や配管などが複雑に配置されているため、狭い場所や死角を回避しつつ安全な飛行が求められます。
そのため、ドローンの性能が高いことはもちろん、操縦技術の高い操縦者を配置しなければならないことは課題の一つといえるでしょう。
プラントのなかには可燃性ガスや可燃性液体の蒸気を取り扱っているところもあり、爆発の危険を伴う危険な現場が多くあります。
ドローンを安全に飛行させることはもちろん、万が一に備えて防爆構造であるドローンが必要です。
ドローン点検では電波やコンパスが欠かせないものであり、電波やコンパス機能を使って位置を把握したり、安定した飛行ができるようになったりしています。
しかし、プラント内は磁気干渉やコンパスエラーが発生しやすい環境であり、障害が発生しても安定して飛行できる高性能なドローンが求められることも課題の一つです。
ドローンでプラント点検を実施するためには、ドローンとプラントの両方の知見を持った人材の育成・確保が必要になることも課題として挙げられます。
プラントという特殊かつ危険な場所であるため、安全性の高い点検を実現するためには、両方の知識・技術が欠かせないからです。
現状、若年技術者の減少が大きな問題となっており、ドローン点検のニーズが拡大していく一方で、プラントとドローンの両方の知識・技術を持つ人材をどのように育成していくかが課題となっているのです。
プラントをはじめとするインフラ分野では、高度成長期に建てられた施設が老朽化し、点検・維持が大きな問題になっています。さらに、点検作業員の人手不足や高齢化、技術継承ができていないなど複数の課題が浮き彫りとなっているのが現状です。
そこで、ドローンを使った効率的な保守管理に期待が高まっています。とくに、石油や科学、電気、ガスといった分野のプラントのオーナーは大手企業であることが多く、スタートアップ系のプロバイダと共同して積極的に導入を進めていこうという姿勢が見られます。
また、経済産業省では2022年9月に「高圧ガス保安法律の一部を改正する法律」を施工しており、この法律改正において「テクノロジーを活用しつつ、自立的に高度な保安を確保できる従事者」の認定事業者に対するインセンティブを充実させるとしています。
そのため、今後さらにドローンの活用促進が進むと考えられるでしょう。
ただし、プラント点検は爆発などの危険を伴うため、防爆構造のドローンが必要であるなどの課題もあり、実用化には時間がかかると見込まれます。とはいえ、需要拡大や法改正に伴い、ドローンによるプラント点検は広がっていくといえるでしょう。
なお、ドローンによる点検については以下の記事をご覧ください。
関連記事:ドローン点検とは?メリット・デメリットや点検事例、費用相場を詳しく解説
今回は、ドローンによるプラント点検について解説しました。
日本にあるプラントの多くは高度経済成長期に建設されており、設置以来、点検が行われていないところも少なくありません。さらに、点検作業員の現状や点検時に危険を伴うといった課題も多いのが現状です。
そこで、従来の点検方法のさまざまな課題を解決できるとして、ドローンによるプラント点検が注目されています。現状、課題もありますが、ドローンの性能アップや人材育成が進むことで普及拡大が期待されています。
ぜひ今回の記事を参考に、ドローンによるプラント点検について検討してみてください。
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