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    点検 2024.01.28

    ドローン点検の課題10個|メリットや将来性についても解説

    最終更新:2024.01.28

    ドローンは空撮や災害救助などに利用されていますが、最近では建物やインフラ設備の点検などにも用いられています。

     

    ドローンを使って点検ができるようになれば、従来の点検で問題とされていた膨大な時間やコストがかかること、危険性が高いことなどを解決できる可能性があります。しかし、さまざまなメリットが期待されている反面、課題も少なくありません。

     

    そこで今回は、ドローン点検の課題を解説します。ドローン点検のメリットや将来性についても解説しますので、ドローン点検に興味を持っている方はぜひ参考にしてください。

     

    ドローン点検で期待されていること

    ドローン点検とは、カメラや赤外線調査機器などを搭載した点検用ドローンを使って対象の建造物を撮影し、撮影データを解析して劣化や不具合を調査することです。

     

    なお、ドローン点検は民間の企業などが設備点検として用いる場合と、行政がインフラ点検で用いる場合の2パターンに大別でき、どちらの点検であっても、主に以下の3つのポイントが期待されています。

     

    • 安全性の向上
    • 高精度の点検
    • コスト削減

     

    ドローン点検は、従来、作業員が手作業で実施していたことを、ドローンで代替できることが最大の特徴です。

     

    そのため、点検時の安全性向上を始め、人為的ミスがなくなることによる点検精度の向上、作業員数を少なくして効率的に点検ができることで低コストになることなどが期待されています。

     

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    【性能・技術面】ドローン点検の8つの課題

    ドローン点検はさまざまな期待が持たれている反面、まだ実証段階であることから課題も多くあります。

     

    ここでは、ドローンの性能・技術面における8つの課題を具体的に解説します。

    1:打診・目視による点検ができない

    従来の点検では、打診・目視による点検が実施されていました。打診点検とは、専用のハンマーを使って建造物を叩き、叩いたときの異音から内部にできた空洞や鉄筋の劣化などの不具合を発見する方法です。

     

    また、作業員が手作業で打診点検を実施するため、目視による点検も同時に実施できます。打診・目視による点検は、ひび割れなどの表面的な不具合はもちろん、内部の不具合も発見しやすいことが強みでした。

     

    しかし、ドローン点検は点検対象となる建造物と一定の距離を取る必要があり、打診・目視による点検はできません。また、非接触での点検となるため、表面的な不具合は発見できても、内部の不具合は発見しにくいといえるでしょう。

    2:撮影できない箇所がある

    ドローンは小型であることから、どこでも撮影できるというイメージを持っている方も多いでしょう。しかし、場所によっては撮影に適さないケースがあります。

     

    ドローンは「暗所」「狭所」の点検に適さないため、以下のような場所は撮影できないケースがあります。

     

    • 鉄塔の裏側
    • 橋梁の隙間
    • 建物の隙間
    • プラントや工場内の暗い場所 など

     

    ドローンに照明を取り付けたり、小型の機体を採用するなどして対応できるケースもありますが、点検に適した環境でなければ調査の質が落ちてしまうことがあり、実証を重ねて精度を高めていくことが求められています。

    3:天候によっては点検できない

    ドローンは風や雨などに弱く、天候によっては点検できないことも課題の一つです。

     

    建物やインフラなど、ドローン点検は屋外で実施することが多いですが、雨や風の影響で機体が墜落するケースがあります。さらに、山間部の風力発電所や送電線を点検する場合、山特有の急な天候の変化にも注意する必要があるでしょう。

     

    また、気温や湿度が高い環境下では、ドローンが熱暴走を起こす可能性もあります。

     

    そのため、あらゆる環境でも対応できるタフな機体が求められています。

    4:高性能なドローンが必要になる

    ドローンは天候の影響を受けやすいため、点検用ドローンは雨や風などに強い機体が求められると解説しました。しかし、悪天候に強いだけでなく、電波や磁気への耐性も必要であり、結果的に点検を行うには高性能なドローンが必要になるといえます。

     

    たとえば、山間部やトンネル内は電波が入りにくかったり、鉄道や工場などは電波の干渉を受けやすかったりすることから、過酷な環境下でも安定して電波を受信できる、もしくは電波がなくても自立飛行ができる機体が求められます。

    5:騒音トラブルになりやすい

    産業用ドローンの飛行音は約65〜70dbとされており、騒音トラブルになりやすいことも課題です。

     

    一般的な騒音の基準値と具体例は以下のとおりです。

     

    騒音値(db) 騒音度 具体例
    80~120db 非常にうるさい
    • 地下鉄の車内(80db)
    • 犬の鳴き声(90db)
    • 自動車のクラクション(110db)
    • ジェットエンジン(飛行機)の近く(120db)
    60~80db うるさい
    • 掃除機(60db)
    • セミの鳴き声(70db)
    40~60db 普通
    • 換気扇(50db)
    • 図書館(40db)
    20~40db 静か
    • 郊外の深夜(30db)
    • ささやき(20db)

     

    ドローンはプロペラを回転させるときに風を切る音やモーターの動作音が生じてしまうため、ドローンを飛ばすうえで騒音が発生するのは避けられません。

     

    とはいえ、飛行機やセミの鳴き声と同等の音が生じるため、住宅街や小学校・病院などの施設周辺を飛行させるときは、騒音によるトラブルになりやすいといえるでしょう。

    6:情報漏えいのリスクが伴う

    ドローンは常に外部と通信しながら飛行するため、情報漏えいのリスクを伴います。

     

    サイバー攻撃によって勝手に遠隔操作されたり、撮影したデータを盗まれてしまったりするリスクがあり、機密性の高い場所で撮影を行うときはとくに注意が必要です。セキュリティの高いドローンも開発されていますが、撮影効率の低下やコストアップなどがハードルとなっています。

    7:GPSが不安定な場所での点検には適さない

    ドローン点検ではGPSが重要であり、GPSを使って位置を把握したり、安定した飛行ができるようになったりしています。

     

    しかし、送電線の周辺やトンネル内、山間部などでは安定してGPSを受信するのがむずかしく、GPS以外のもので位置を把握できるドローンが求められています。

     

    8:完全な自立飛行は実証段階である

    ドローンで完全な自立飛行ができれば、点検に必要な作業員数や時間、コストが大幅に削減できますが、完全な自立飛行はまだ実証段階です。

     

    飛行時の一部を自立飛行できても、離陸やバッテリーの充電、交換、機器の管理などは人の手が必要です。そのため、ドローンが完全に人に代わって、点検作業を行うのはまだ先になるといえるでしょう。

     

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    【法・条例などの規制面】ドローン点検の2つの課題

    機器の性能・技術面における課題のほか、法律や条例などの規制による課題もあります。

     

    ここでは、法律や条例などの規制面におけるドローン点検の課題を見ていきましょう。

    1:ドローン点検はさまざまな法律・条例で規制されている

    ドローンは、航空法や小型無人機等飛行禁止法などで、飛ばす場所や飛ばす方法に関する規制が設けられています。さらに、都道府県や市区町村による条例で規制されているケースもあり、点検する場所やドローンの飛ばし方によっては規制対象となります。

     

    さらに、2022年に規制内容が変わり、これまで航空法では重さ200g以上の機体が規制対象であったのに対し、100g以上のドローンが規制対象となったり、ドローンの機体を国土交通省に登録する機体登録精度が義務化されたりしたことも大きな変更点です。

     

    ドローンの普及に伴い、安全に飛行させるために今後も規制の変更が行われる可能性があります。

     

    規制対象であっても、許可を得られれば飛行可能となるケースがありますが、ドローン点検を行う前に、慎重に規制対象となるか確認しましょう。

     

    関連記事:ドローンに関する規制・法律とは?種類や内容、違反した場合の罰則などを解説

    2:レベル4飛行を行うには条件を満たす必要がある

    近年のドローンの普及拡大を受けて2022年12月より規制緩和が行われ、これまで飛行不可であった「レベル4」の飛行が開始されました。しかし、レベル4の飛行を行うには、さまざまな条件を満たさなけれなならないことが課題の一つです。

     

    なお、経済産業省が出した「小型無人機の利活用と技術開発のロードマップ」において飛行するエリアや飛行方法などでレベル分けが行われており、各レベルは以下のとおりです。

    • レベル1:目視可能な範囲で操縦者が送信機などで手動操作を行う
    • レベル2:離着陸の場所や飛行ルート・速度などを事前にプログラムさせ、目視可能な範囲で自動飛行させる
    • レベル3:山間部や河川など第三者が立ち入る可能性の低い場所にて、補助者の配置なしで目視できない範囲を自動飛行させる
    • レベル4:住宅やビルなど人口が集中しているエリアなどにて、補助者の配置なしで目視できない範囲を自動飛行させる

    参考:レベル4⾶⾏の実現、さらにその先へ|内閣官房 ⼩型無⼈機等対策推進室

     

    レベル4の飛行が可能になったことで、ドローンを使って荷物を配送できるようになったり、災害時の救援物資輸送に活用できたりすると期待されています。では、レベル4の飛行に必要な条件を見ていきましょう。

    機体登録制度

    2022年6月からドローンの所有者や機体情報を把握することを目的に「機体登録制度」が施行されました。

     

    レベル4の飛行かどうかにかかわらず、100g以上のドローンを屋外で飛行させる場合は、こちらの制度に登録しなければなりません。

    機体認証制度

    機体認証制度とは、ドローンの設計や製造過程、機体の状態が安全基準に適合しているか検査し、安全性を補償するための認証制度です。

     

    機体認証制度は運航状況のリスクに合わせて「第一種」と「第二種」に大別でき、レベル4の飛行のためには、厳格な審査が行われる「第一種」を取得したドローンでなければなりません。

     

    なお、機体認証制度はドローンの製造するメーカーが申請する「型式認証」とドローンの使用者が申請する「機体認証」があり、型式認証を取得しているドローンの場合、機体認証の検査のすべてもしくは一部が省略される仕組みです。

    ドローン操縦者の技能証明(ライセンス)制度

    ドローンを操縦する際、資格は必要なく、任意で取得可能な民間資格だけが取得可能でした。

     

    しかし、ドローン操縦者の知識や技術を証明する制度として、2022年から国家資格となる「ドローン操縦者の技能証明(ライセンス)制度」が施行されました。こちらの資格制度は「一等無人航空機操縦士」と「二等無人航空機操縦士」の2種類があり、指定の講習をうけて試験に合格すれば取得可能です。なお、有効期間は3年となっています。

     

    レベル4の飛行では、「一等無人航空機操縦士」の取得が必須となります。民間資格などを取得していても、一等無人航空機操縦士を取得していなければドローンを飛ばせないため、未取得の方は新たに資格を取得しなければなりません。

    運航ルール

    レベル4の飛行にかかわらず、ドローンの飛行には共通の運航ルールが設けられています。

     

    【運航ルールの概要】

    • 飛行計画の通報:飛行の日時・経路・高度などを通報し、他ドローンと重複を防ぐ
    • 飛行日誌の作成:飛行場所・時間・整備状況などを記載した日誌を作成する
    • 事故報告の義務:事故やトラブルが発生した場合、発生日時、場所、事案の概要の報告を国に行う
    • 負傷者の救護義務:負傷者の救護、警察・消防などへの連絡など必要な措置を行う

     

    上にあるルールに加えて、レベル4の飛行では個別の運航管理体制についても国に報告しなければなりません。

     

    このように、規制緩和によってレベル4の飛行が可能になったとはいえ、さまざまな条件を満たす必要があるのは課題となるでしょう。

     

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    ドローン点検のメリット

    ドローン点検は、従来の点検では実現できなかったさまざまなメリットがあります。

     

    ここでは、ドローン点検によるメリットを詳しく見ていきましょう。

    点検にかかる時間・作業員数・費用の削減

    ドローン点検を行うことで、従来の点検方法と比較して、点検にかかる時間や作業員数、費用の削減が期待できることが大きなメリットです。

     

    従来の点検では、点検対象の建物や設備を作業員が直接点検しなければならず、足場を組んだり、特殊車両を用意したりする必要がありました。さらに、手作業で点検を進めていくため、膨大な人件費がかかります。

     

    しかし、ドローン点検なら、地上からドローンを操作するだけで点検が可能です。また、鉄道や送電線などを点検する際、稼働をストップさせなくてもよいことで、収益減による影響も軽減できます。

    点検時の安全性向上

    建物やインフラ点検を行う際、ほとんどのケースで高所作業となり危険を伴います。さらに、工場や下水管の点検では、有毒ガスや爆発による事故リスクもあります。

     

    実際に、厚生労働省の「令和4年度労働災害発生状況の資料」を見ると、業種別の労働災害発生状況において、建設業が最も多い結果となっています。

     

    しかし、非接触で地上から点検できるドローンを活用すれば、高所作業や点検時の事故によるリスクを大幅に軽減でき、安全に点検作業を行うことが可能です。

    点検精度の向上

    ドローン点検は、打診・目視による点検はできませんが、撮影した映像をAIで解析する、見た目ではわからない不具合を赤外線カメラで検知するなど、科学的な点検が可能です。

     

    最近では、ドローンやカメラの性能が向上しており、鮮明な動画で点検・診断ができます。

     

    また、機械的に点検を実施できるため、人為的ミスが起きず高精度の点検を実現できることも特徴です。

     

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    ドローン点検の将来性や取り組み

    ドローン点検は実証段階であるため、課題が複数あるのが現状です。

     

    しかし、従来の点検方法の問題を解決できる有効な点検方法であるとして注目されており、実用化に向けてさまざまな取り組みが行われています。

     

    ここでは、ドローン点検の将来性や取り組みについて見ていきましょう。

    有人地帯での目視外飛行が可能になる

    2022年の法改正により、レベル4と呼ばれる有人地帯での目視外飛行が可能となりました。とはいえ、まだ実用化はされていない段階であり、実用化に向けて以下のような取り組みが行われています。

     

    ・ドローンを活用した配送の実証実験

    ・火力発電所設備点検におけるドローンの活用(関西電力株式会社)

    ・施設点検におけるドローンの活⽤(JSR株式会社)

    ・ドローンで撮影した画像とAI解析技術でキャベツの生育状況を確認(株式会社vegeta)

    ・離島における医薬品配送(長崎県)

    ・積雪寒冷条件下における実証(北海道)

    など

     

    参考:レベル4⾶⾏の実現、さらにその先へ|内閣官房 ⼩型無⼈機等対策推進室

     

    このように、さまざまな実証実験が行われており、社会を担う技術として実用化が進められています。

    日本国内の複数の企業が無人航空機管制を開発・実証している

    ドローンの実用化が進んでいくと同時に、飛行時の接触事故などが増えると予想されていることから、国内の複数の企業が「無人航空機管制」の開発・実証を進めています。

     

    「無人航空機管制」とは、空域を飛行するドローンを一元管理するシステムであり、こちらのシステムが実用化できれば、安全かつ効率的にドローンを飛行させられます。

     

    空の交通整備が進めば、より安全にドローンを飛ばすことができ、実用化が進むでしょう。

    高性能なドローンが増えている

    ドローン点検の精度や安全性を向上させるために、ドローンそのものの性能を上げる取り組みも行われています。

     

    たとえば、同シリーズのドローンで、数年で連続飛行時間が約2倍になったものがあったり、搭載できるペイロードの重さや種類が増えたりと、ここ数年で性能が大きく向上しているのです。

     

    さらに、セキュリティ面の強さから国産ドローンへの期待が高まっており、今後、点検に適したドローンが増えていくと予想されます。

    課題はあるがドローン点検の将来性は高い

    今回は、ドローン点検の課題について解説しました。

     

    建物やインフラの点検は、従来の方法では問題が多く、対策としてドローン点検が注目されています。もちろん、ドローン点検にも課題はあるものの、人に代わって点検を実施できることで、効率化やコスト削減、安全性が向上するなどのメリットがあります。

     

    実際に、実用化に向けて法規制が変わったり、点検に適したドローンの開発が進められたりしており、ドローンが社会に欠かせない存在となる日が近いといえるでしょう。

     

    ドローン点検のメリット・デメリットや事例については、以下の記事でも詳しく解説しています。

     

    関連記事:ドローン点検とは?メリット・デメリットや点検事例、費用相場を詳しく解説

     

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