点検 2024.01.28

ドローンによるインフラ点検が注目されている理由は?課題や事例についても解説

#インフラ

最終更新:2024.06.18

ドローンは空撮に使用するイメージが強いですが、最近ではインフラ点検時の効率アップや安全性向上などが期待できるとして、インフラ点検にも活用され始めています。

 

実際に、インフラ点検を検討している方のなかには、

 

「ドローンを使って点検してみたい」と興味を持っている方も多いでしょう。

 

そこで今回は、ドローンによるインフラ点検の現状や注目されている背景、メリットや課題などを解説します。

実際の点検事例についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

 

インフラ点検の現状

インフラとは、「インフラストラクチャー(Infrastructure)」の略語であり、生活を支える基盤、ライフラインという意味になります。たとえば、道路やトンネル、橋梁、下水道などが代表的なインフラといえるでしょう。

 

日本には数多くのインフラがありますが、生活を支えるはずのインフラが老朽化し、事故やトラブルを引き起こす「インフラの老朽化問題」が社会問題となりつつあります。

 

というのも、全国にある数多くのインフラ設備を高度経済成長期に一斉に建設したことで、今後20年のうちに建設から50年を超えるインフラが加速度的に多くなることがわかっているのです。

 

【建設後50年以上経過する社会資本の割合】

2020年3月 2030年3月 2040年3月
道路橋

[約73万橋(橋長2m以上の橋)]

約30% 約55% 約75%
トンネル

[約1万1千本]

約22% 約36% 約53%
河川管理施設(水門等)

[約4万6千施設注2)]

約10% 約23% 約38%
下水道管きょ

[総延長:約48万km]

約5% 約16% 約35%
港湾施設

[約6万1千施設注3)(水域施設、外郭施設、係留施設、臨港交通施設等)]

約21% 約43% 約66%

 

注1:建設後50年以上経過する施設の割合については建設年度不明の施設数を除いて算出した。

注2:国:堰、床止め、閘門、水門、揚水機場、排水機場、樋門・樋管、陸閘、管理橋、浄化施設、その他(立坑、遊水 池)、ダム。独立行政法人水資源機構法に規定する特定施設を含む。

都道府県・政令市:堰(ゲート有り)、閘門、水門、樋門・樋管、陸閘等ゲートを有する施設及び揚水機場、排水機場、ダム。

注3:一部事務組合、港務局を含む。

 

引用:社会資本の老朽化の現状と将来|国土交通省

 

上の表のとおり、2040年には数多くのインフラが建設から50年以上経過することがわかります。とくに、全国に73万箇所もある橋梁の約73%が2040年に建設から50年以上経過するため、点検や保全には膨大なコストがかかるといえます。

 

実際に、国土交通省の推計によると、インフラに不具合が生じる前に点検・メンテナンスを行う「予防保全」を実施した場合、2048年までに5.9〜6.5兆円かかると見込まれており、インフラを維持していくための点検コストや作業員不足が問題となっています。

参考:国土交通省所管分野における社会資本の将来の維持管理・更新費の推計|国土交通省

 

ドローンによるインフラ点検が注目されている理由

インフラの老朽化は、昨今の日本の社会問題となっています。そして、老朽化していくインフラを安全に利用していくためには不具合が生じる前の点検・メンテナンスが欠かせません。

 

しかし、点検すべきインフラが多すぎることや、人手不足、点検に時間やコストがかかりすぎることなどが問題となっており、従来の点検方法に代わってドローンによるインフラ点検が注目され始めています。

 

では、ドローンによるインフラ点検が注目されている理由を具体的に見ていきましょう。

理由1:建設業界の人手不足

日本は少子高齢化が深刻な社会問題となっています。みずほ総合研究所の調査結果によると、2016年の労働人口は6,648万人(労働力率60%)であったのに対し、2065年の労働力人口は約4,000万人(労働力率50%)にまで低下すると見込まれています。

 

実際に、建設業界でも人手不足が進んでおり、深刻な人手不足のなか、膨大な数のインフラを点検・メンテナンスしていかなければならない状況となっているのが現状です。

 

そこで、建設業界の人手不足を解消する手段として、ドローンによるインフラ点検が注目されています。インフラ点検でドローンを活用することで、効率的な点検ができるようになり、点検に必要な作業員数や時間を大幅に減らせる可能性があります。

 

参考:労働力率引き上げの鍵を握る働き方改革|みぞほ総合研究所

 

理由2:インフラの老朽化が進んでいる

先述のとおり、道路やトンネル、橋梁など、生活に欠かせないインフラは、老朽化が問題となっています。

 

実際に事故が発生したケースもあり、2021年に和歌山県で六十谷水管橋の落橋が発生し、約6日間、約6万世帯が断水する事態となりました。こちらの事故はインフラの老朽化がもたらしたとされており、今後、インフラの老朽化問題が深刻化すればこのような事故が増えていくと予想されます。

 

そのほか、2018年に発生した西日本豪雨で広島県の砂防ダムが決壊した事故を覚えている方もいるでしょう。

 

このように、老朽化したインフラを安全に使っていくためには、定期的な点検とメンテナンスが欠かせません。しかし、必要なインフラ点検に対して、十分な点検が実施できていないことも事実です。

 

しかし、ドローンを活用すると、従来の点検方法と比較して効率的で、安全かつ安価に点検できます。そのため、予算も人員も足りないインフラ点検の救世主として、ドローンが注目されているのです。

 

理由3:ドローンに関する規制が緩和された

インフラ点検にドローンを活用することは、効率的かつ安全であるとして注目されていることがわかりました。さらに、法律や条例が整備され、規制が緩和されたこともドローン点検が注目されている理由の一つです。

 

ドローンの普及に合わせて、2022年にドローンに関する法律の内容が以下のとおり変更されました。改正されたポイントは大きく以下の3つが挙げられます。

 

  • 操縦者の国家資格が設けられた
  • 重さ100g以上のドローンが規制対象になった
  • 機体の登録が義務化された

 

2022年12月から、「無人航空機操縦者技能証明」という国家資格が設けられており、講習を受けて試験に合格すれば「一等無人航空機操縦士」または「二等無人航空機操縦士」が取得可能です。

 

ドローンは無資格でも飛ばすことは可能ですが、「一等無人航空機操縦士」を取得することで、ドローンを飛ばすときの申請が簡単になったり、目視外飛行が可能になったりするため、ドローンの活用範囲が大きく変わりました。

 

また、重さ100g以上のドローンが航空法の規制対象となったことや、ドローンの機体を国土交通省の「無人航空機登録制度」に登録することが義務化されたことも変更点です。

 

このように、ドローンの普及に合わせて、安全に活用できるシーンを増やしていくために規制緩和や変更が行われたことも注目を後押ししているといえます。

 

関連記事:【2023年度版】ドローンの飛行には免許が必要?免許制度(国家資格)も解説

 

 

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ドローンによるインフラ点検のメリット

ドローンでインフラ点検を実施することで、期待できるおもなメリットは以下の5つです。

 

  • 点検時の安全性の向上
  • 点検時間・コストの削減
  • 少人数で点検ができる
  • 点検精度の向上
  • 劣化の早期発見

 

ドローンによるインフラ点検は、地上からドローンを操作するだけで完結します。従来の点検方法のように、作業員による高所作業が不要になるため、点検時のリスクを大きく軽減できます。

 

さらに、クレーン車や足場を組んで手作業で点検を実施する従来の方法とは異なり、ドローン点検は特殊車両や足場が不要のため、短時間で広範囲を点検できることも大きなメリットです。

 

たとえば、従来の方法で行う橋梁点検が3時間かかるのに対し、ドローン点検ではあれば同規模の橋梁を1時間程度で点検可能であり、約3倍の効率化が見込めます。そのため、点検時間やコスト、作業員数の削減につながります。

 

そのほか、ドローンカメラが撮影した映像をAI (人工知能) が映像解析することで精度の高い点検が期待できたり、点検にかかる負担が軽減されることで定期的な点検が可能になって早期発見につながったりすることもメリットといえるでしょう。

 

ドローンによるインフラ点検のデメリット・課題

ドローンによるインフラ点検は、さまざまなメリットがあって注目されている反面、デメリットや課題もあります。

 

ここでは、ドローンによるインフラ点検のデメリットや課題を解説します。

撮影に適さない場所がある

ドローンは小型でどこでも点検できると思われがちですが、撮影に適さない場所もあります。

 

たとえば、橋梁の隙間や建物同士の隙間がわずかしかない場所は、撮影に適さないといえるでしょう。小範囲を撮影しようとすると、ドローンの操縦難易度がアップし、機体や建物などを損傷させてしまうリスクも高まります。

 

最近では、2台のカメラで3次元立体映像を構築して障害との位置関係を認識し、自動飛行して撮影できるドローンも登場していますが、高性能ドローンを使っても、すべての場所を撮影できるわけではないことを認識しておきましょう。

打音・触診点検ができない

ドローンによるインフラ点検は、非接触で効率的な点検ができる反面、打音・触診による点検が実施できないこともデメリットの一つです。

 

打音点検とは、専用のハンマーで建造物を叩き、異音から不具合や劣化を検知する方法です。さらに、打音点検を実施すると同時に、触診や目視による点検も実施できます。従来は主にこちらの点検方法が採用されており、見た目では気が付かないような内部にできた亀裂や鉄筋の腐食などを検知できることが大きな強みでした。

 

しかし、ドローン点検の場合、点検対象の建造物と一定の距離を取る必要があり、打音・触診による点検は実施できません。点検精度が低いわけではないですが、打診点検と比較すると建造物の内部の不具合には気付きにくいといえます。

事故が起こる可能性はゼロではない

ドローンを使うことで、作業員の転落事故など、点検作業時のリスクを大幅に減らせることがメリットですが、事故が起こる可能性がゼロではないことも課題です。

 

ドローンを飛ばすことで、バッテリー切れや電波の不具合による墜落事故、建物や人との接触事故などのリスクがあります。また、ドローンは天候に左右されやすいため、点検中に天候が悪化して墜落する可能性もあります。

騒音トラブルになる可能性がある

ドローンは空撮を行うときに飛行音が発生するため、騒音トラブルになる可能性があります。

 

とくに、学校や病院などの施設の近く、住宅地周辺で点検用ドローンを飛ばす際、騒音によるクレームが入ったり、盗撮されているとの勘違いからトラブルに発展することもあるでしょう。

 

そのため、ドローンを飛ばす周辺に住宅や施設があるときは、事前に十分な説明を行う必要があります。

GPSが安定しない・届かない場所では点検できない

ドローンを安定して飛行させるためには、GPSが欠かせません。

 

たとえば、トンネル内や橋梁の下ではGPSが入りにくいことが多く、その場合はGPSに頼らず手動運転させる技術が求められます。

 

なお、現在では非GPS環境下で安定した自立飛行を可能にするドローンの開発が実用化に向けて進んでいます。

ドローンによるインフラ点検の事例

最後に、ドローンによるインフラ点検の事例を見ていきましょう。

橋梁の点検

インフラ点検のなかでも、とくにドローンの活用が期待されているのが橋梁点検です。

 

従来の点検方法では、交通規制をしたうえで、特殊車両を用いて作業員が直接目視で点検しなければならず、時間もコストもかかるうえに危険が伴うことが問題視されていました。

 

しかし、ドローンを使うことで作業員が目視で行っていた作業をドローンに置き換えることができ、より効率的かつ安全に点検ができます。

 

実際に、ドローンを使って橋梁点検を実施するケースも増えており、今後の活躍が期待されています。

太陽光パネルの点検

太陽光パネルの点検をドローンで実施しているケースもあります。

 

ドローンにサーマルカメラと光学カメラを搭載し、太陽光パネルの温度差によって異常を検知する方法です。太陽光パネルに不具合があれば、一部の温度だけが高くなっていることなどがあり、撮影データを解析することで効率的に異常を発見できます。

 

従来の点検方法では、手作業で1枚ずつパネルを点検していたため、膨大な時間とコストがかかっていましたが、ドローンを使うことで包括的に点検可能です。

風力発電所の点検

風力発電設備は、屋外で常に過酷な環境にさらされていることから、経年劣化や自然災害によるトラブルが発生しがちです。

 

そのため、風力発電は部位ごとに半年、1年、3年ごとの定期事業者検査と、3年後との定期安全管理審査が義務付けられています。しかし、日本には風力発電機が2,500基以上あり、作業員が1基ずつ点検していくのはむずかしいのが現状です。

 

さらに、ロープを使って宙づり状態で点検しなければならないこともあり、危険が高いことも問題視されています。

 

しかし、ドローンを活用すれば、地上にいながら点検が可能であり、従来の点検方法で課題となっていることが解決できます。現在では、実証段階から商用化の段階に移行しつつあります。

建物の屋根・外壁の点検

建物の屋根や外壁の点検にもドローンが活用されています。

 

屋根や外壁の劣化を早期に発見することで、深刻な修繕が必要になる前にメンテナンスができたり、雨漏りを防止して良い建物の状態を維持したりすることにつながります。

 

従来の屋根・外壁の点検では、足場を組んで作業員が登って作業していましたが、落下の危険性がありました。しかし、ドローンを使うことで、足場を組む必要がなくなるうえに、作業員が地上からドローンを操作するだけで点検できます。

 

肉眼で屋根や外壁を見るのと変わらない精度で点検できるため、今後さらに導入が見込まれるでしょう。

道路の点検

高速道路では、道路に異常がないか点検するために、点検車両を低速で走行させて目視で異常を調べています。

 

場所によっては足場を組んだり、一時的に道路を閉鎖したりしなければならず、作業者・利用者ともに制限がかかるのが現状です。しかし、ドローンを使うと道路を閉鎖せずに点検できることに加え、足場を組まずに点検が可能となります。

 

さらに、広い範囲を効率的に撮影できるため、従来の点検にかかっていた時間やコストの節約にもつながり、活躍が期待されています。

送電線・基地局鉄塔の点検

送電線は落雷で損傷を受けたり、経年劣化によって素線切れが発生したりするため、定期的な点検が欠かせません。

 

現状、電工という専門の職人が直接登り、宙づり状態で目視点検をしています。しかし、高所作業による危険が伴うのはもちろん、特殊な技術が必要になるため人手不足も問題となっています。さらに、宙づり点検では感電リスクがあるため、点検作業中は通電を止めなければならないことも問題となっていました。

 

そこで、各電力会社ではドローンを使って送電線・基地局鉄塔の点検を進めています。

工場・プラントの点検

工場やプラントは、不具合が起こるたびに修繕をするというスタイルでは稼働率が落ちてしまうため、定期点検によって状態を維持することが大切です。

 

しかし、工場やプラントを点検するには足場が必要になったり、大型貯蔵タンクや塔類は目視点検がむずかったりすることから、従来の点検方法では課題が多くありました。

 

一方、ドローンを使って工場やプラントの点検を実施すると、足場を組まずに、目視による点検がむずかしかった箇所も点検可能となります。さらに、災害で工場やプラントの稼働がストップしたときに、ドローンを使って迅速に必要箇所を点検できることもメリットです。

 

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インフラ点検にドローンを活用してみよう

今回は、ドローンによるインフラ点検について解説しました。

 

インフラの老朽化問題は、日本の社会問題となっており、老朽化していくインフラを安全に利用していくためには「予防保全」が欠かせません。しかし、従来の点検方法では問題が多いため、ドローンの活用が注目されています。

 

ドローンでインフラ点検を行うことで、点検時の安全性向上につながったり、時間やコストを削減して点検できたりとさまざまなメリットがあります。実際に、橋梁や太陽光パネル、道路などさまざまなインフラ点検がドローンで実施されており、今後も普及していくことが予想されるでしょう。

 

ぜひ今回の記事を参考に、ドローンによるインフラ点検を検討してみてください。

 

ドローン点検のメリット・デメリットや事例については、以下の記事でも詳しく解説しています。

 

関連記事:ドローン点検とは?メリット・デメリットや点検事例、費用相場を詳しく解説

 

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