点検 2024.01.04

12条点検はドローンで実施可能!メリットや注意点などを解説

#12条点検

最終更新:2024.01.04

12条点検の項目のなかで、外壁調査は打診点検という方法で実施するのが一般的でした。

 

しかし、打診点検や点検コストがかかりやすい、点検時間がかかりやすいことなどから、ドローンでの点検実施を検討している方もいるでしょう。

 

そこで今回は、12条点検(外壁調査)をドローンで実施するメリットや注意点、費用相場などを解説します。

 

12条点検の検査項目「外壁調査」はドローンで実施可能!

12条点検は、不特定多数の人が利用する特定の建物について、点検を義務化し建物の安全性を確保することを目的とした制度です。

 

12条点検といってもさまざまな点検項目がありますが、そのうちの一つである「外壁調査」はドローンによる点検が可能です。

ドローンによる12条点検(外壁調査)の実施方法

ドローンによる12条点検(外壁調査)とは、ドローンに搭載した赤外線カメラで建物を撮影し、温度差分布から不具合を見つける方法です。

 

たとえば、外壁材としてタイルを使用している場合、一部が浮いていると隙間が空気によって温められるため、正常な外壁面と比較して温度がやや高くなることがあります。また、外壁から雨漏りが発生している場合、雨水によって原因箇所だけ温度が低くなります。

 

このように、ドローンに搭載された赤外線カメラで外壁を撮影することで、温度差からさまざまな劣化や不具合を発見できるのです。

 

そのほか、従来の点検に必要な足場が不要になったり、一度に広範囲の点検が可能になったりすることから、調査時間や調査コストの削減、安全性の向上も期待できます従来の12条点検との違い

従来の12条点検の外壁調査では、「打診調査」と呼ばれる方法で行うのが一般的でした。

 

打診調査とは、専用の打診棒で外壁を叩き、異音から劣化や不具合を見つける方法です。作業員が手作業で調査していくため、打診調査と同時に目視による調査も実施でき、音と目から異常がないか調べられます。

 

打診調査は、ドローン点検とは異なり、表面化していないわずかな不具合も発見しやすいことから、精度の高い調査を期待できることが特徴です。

 

しかし、打診調査を行うときは足場が必要となるうえに、高所作業による危険が伴います。さらに、ひとつひとつ手作業で調査していくことから、時間やコストがかかることなどがデメリットです。

 

なお、打診調査とドローン点検の違いは以下の表のとおりです。

 

打診調査 ドローン点検
点検方法 専用の打診棒で外壁を叩き、異音から劣化や不具合を見つける方法 ドローンに搭載した赤外線カメラで建物を撮影し、温度差分布から不具合を見つける方法
足場やクレーン車の必要性 必要 不要
点検時間 長い 短い
点検費用 高い 比較的安い
安全性 低い

(作業員が高所作業を行うため)

高い

(地上からドローンを操作するだけであるため)

調査の精度 高い 比較的高い

(表面化していない不具合は見落としやすい)

 

以上のような違いがあります。どちらの調査方法もデメリットはあるため、二つの調査方法を併用するという選択肢もあるでしょう。

 

12条点検(外壁調査)をドローンで行うメリット

ドローンで12条点検(外壁調査)を実施したいと考えている方のなかには、具体的にどのようなメリットがあるのか気になっている方も多いでしょう。

 

12条点検(外壁調査)をドローンで実施するときのメリットは、以下の6つです。

  • 調査にかかる時間や工数を削減できる
  • 調査費用を抑えられる
  • 調査に伴う危険を減らせる
  • 外壁を傷つけない
  • 建物の利用者のストレスを軽減できる
  • 調査データが可視化できる

 

ひとつずつ具体的に見ていきましょう。

調査にかかる時間や工数を削減できる

ドローンを使って12条点検をすると、従来の点検方法と比較して、調査にかかる時間や工数を削減しやすいことがメリットの1つです。

 

建物の大きさによりますが、打診調査で外壁全面を調査するとなると、調査完了までに半月〜1ヶ月ほどかかります。一方、ドローン点検であれば、同規模の建物で撮影は1日で終了します。

 

ただし、ドローン点検の場合、撮影したデータを分析する必要があるため、実際にたった1日ですべての点検が完了するわけではありません。とはいえ、打診調査と比較して、大幅に調査にかかる時間や工数を削減しやすいのは大きなメリットであるといえるでしょう。

調査費用を抑えられる

ドローンによる12条点検は、調査にかかる時間や工数を削減できることから、調査費用の削減につながることもメリットです。

 

打診調査の場合、建物の大きさによりますが、調査完了までに半月〜1ヶ月ほどかかることが一般的であることに加え、現場に5〜6名の作業員が必要になるケースも少なくありません。しかし、ドローン点検なら、同規模の建物で撮影機関は1日、作業員は2名程度で済むことから、大幅に人件費を減らせるのです。

 

さらに、足場やクレーン車が必要ないため、点検に必要な材料費を抑えやすいことも、比較的安く調査できる理由の一つです。

調査に伴う危険を減らせる

ドローンによる12条点検は、事故リスクを減らせることもメリットとして挙げられます。

 

打診調査の場合、作業員が足場のうえで点検作業を行わなければならず、常に転落の危険が伴います。また、作業が手作業であるうえに長期化しやすいため、集中力低下に伴い物を落としたり、転落したりする危険も伴います。

 

しかし、ドローン点検であれば、作業員に代わってドローンが高所を飛行し、撮影できるため、高所作業による危険はゼロとなります。ドローンが建物に衝突したり、落下したりする危険は伴いますが、飛行範囲に人が入らないようにすることで、安全性を高められます。

 

もちろん、安全に配慮した適切な点検が前提となりますが、ドローン点検は打診点検と比較して事故リスクを大きく軽減できるのです。

外壁を傷つけない

ドローンを使った12条点検は、非接触での調査が可能であるため、外壁を傷つけないこともメリットの1つです。

 

打診調査の場合、外壁を叩いて調査していくため、全く傷がつかないとは言い切れません。また、外壁の劣化が進行している場合、少し叩いただけで外壁が剥がれることもあります。

 

ドローンによる12条点検は、操作ミスや機器の不具合で建物にぶつかる危険があるものの、正常に点検できれば建物を傷つける心配がありません。

 

建物の利用者のストレスを軽減できる

ドローンを使った12条点検は、建物の利用者のストレスを軽減できることもメリットでしょう。

 

打診点検の場合、建物全体を囲うように足場を組まなければなりません。足場は設置・解体のときに騒音が気になりやすいことに加え、日当たりが悪くなったり、窓を開けづらくなったりすることもあり、入居者にストレスをかけやすいといえます。

 

また、打診点検は作業員が外壁を手作業で調査していくため、プライバシー面やセキュリティ面での不安もあるでしょう。

 

しかし、ドローン点検ならそもそも足場が不要であるため、騒音や日当たり、窓の開閉などでストレスに感じることはありません。また、撮影期間は1日で済むことが多いため、プライバシー面やセキュリティ面の不安も軽減されやすいでしょう。

調査データを可視化できる

12条点検をドローンで実施することで、調査データを可視化できることもメリットです。

 

打診点検は、調査員が音を聞き分けることから、感覚的な要素が大きいといえます。しかし、赤外線カメラで撮影すると、人の感覚や集中力などに左右されることなく、データから不具合を見つけられます。

 

さらに、調査データを保存できるため、後から調査結果を見返すなど自由な調査データの使い方が可能です。

 

12条点検(外壁調査)をドローンで行うときの注意点

ドローンで12条点検を実施すると、さまざまなメリットがあるとわかります。しかし、以下のとおり注意点もあります。

 

  • 天候に左右されやすい
  • データにバラつきが生じることがある
  • ドローン飛行は法律や条例による制限がある

 

12条点検でドローンを導入しようと検討している場合、注意点も把握しておくことが大切です。

天候に左右されやすい

ドローンは雨や風に弱いため、悪天候では点検を実施できないことが注意点です。

 

ドローンでの点検に適した条件は、「風が強くないこと・雨が降っていないこと」であるため、天候を見極めて点検日を決めましょう。ただし、点検当日になって天候が悪くなる可能性があるため、別途予備日を決めておくと安心です。

データにバラつきが生じることがある

ドローンによる12条点検は、作業員の感覚に左右されないことなどから、比較的精度の高い調査結果が期待できます。

 

しかし、赤外線カメラで調査を実施することから、天候条件によっては、データにバラつきが生じる可能性があることが注意点です。

 

たとえば、真夏の晴れた日に、外壁に直射日光があたり続けていると、外壁上面の温度が高くなりすぎてデータを取得できません。また、外壁が濡れていたり、雪が付着していたりする場合も、正確なデータを取りにくくなります。

 

このように、ドローンによる12条点検は天候の影響を受けやすいため、気温や日照条件、太陽の高さなどから、外壁がほどよく温まるときを狙って点検を実施することが求められます。

ドローン飛行は法律や条例による制限がある

ドローンで12条点検を実施する際、さまざまな法律や条例の規制を受けるため、建物の場所によっては点検できなかったり、申請が必要になったりすることも注意点です。

 

たとえば、航空法では、以下のとおりドローンの飛行禁止空域と飛行方法に関するルールが決められています。

 

【航空法に記載されているドローンの飛行禁止空域】

  • 空港等の周辺の上空の空域
  • 地表又は水面から150m以上の高さの空域
  • 人口集中地区の上空の空域

 

【航空法に記載されているドローンの飛行方法に関するルール】

  • 薬物および飲酒時の飛行禁止
  • 夜間飛行
  • 目視外飛行
  • 第三者または第三者が所有する物まで30m未満の距離の飛行
  • イベント会場上空の飛行
  • 危険物輸送
  • 飛行中の物件投下

 

そのほか、小型無人機等飛行禁止法や民法、道路交通法、都道府県・市町村条例などでドローンの飛行を制限しているケースがあります。

 

規制対象であっても、申請を行い、許可を得られれば飛行可能となるケースがありますが、事前にどのような法律・条例があるのか把握しておくことが大切です。

 

関連記事:ドローンに関する規制・法律とは?種類や内容、違反した場合の罰則などを解説

 

ドローンによる12条点検(外壁調査)の費用相場

最後に、業者に依頼して、12条点検(外壁調査)をドローンで実施するときの費用相場を見ていきましょう。

 

建物の種類と調査面積 ドローンによる12条点検(外壁調査)の費用相場
9階建てビジネスホテル

1,000㎡

約30万円
14階建てマンション

2,500㎡

約60万円
有料老人ホーム

7,000㎡

約150万円

 

打診点検の場合、1,000㎡規模の建物で約100万円が費用相場となっているため、ドローン点検に切り替えることで7割も点検費用の削減が見込めます。

12条点検(外壁調査)にドローンを活用しよう

今回は、12条点検(外壁調査)をドローンで実施するメリットや注意点、費用相場などを解説しました。

 

従来の外壁調査で一般的であった打診点検と比較して、コストパフォーマンスが高い、作業時間が短縮できる、安全性の向上が期待できるなど、さまざまなメリットがあります。

 

しかし、天候に左右されやすいことや、建物の場所によっては法律や条例の規制対象となるなど、注意点もあります。

 

ぜひ今回の記事を参考に、12条点検(外壁調査)でドローンを積極的に活用してみてください。

 

関連記事:12条点検とは?対象や詳しい検査項目などを解説

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