点検 2023.12.04

外壁の打診調査とは?調査対象や赤外線調査との違いなどを解説

#打診調査

最終更新:2023.12.22

外壁の打診調査とは、外壁の状態を検査する方法の一つです。

 

定期的に打診調査を実施することで、劣化状態を見極めて適切なメンテナンスができるため、建物を安全な状態で維持するのに役立ちます。

 

ただ、建築基準法では、打診調査の実施を義務付けている建物もあります。そのため、建物の種類によっては、法律で定められた方法・タイミングで実施しなければなりません。

 

そこで今回は、建物の打診調査とは何か、建築基準法の対象となる建物の種類やタイミングなどを解説します。

 

外壁の打診調査は建築基準法で義務づけられている

外壁の打診調査とは、ハンマーや打診棒といった専用器具で外壁を叩き、叩いたときの打診音によって劣化や不具合を見つける外壁の点検方法です。

 

外壁は雨や風、紫外線などの影響を受け続けているため、劣化しやすい箇所の一つです。そのため、外壁は経年劣化で外壁塗装の色あせや剥がれ、クラック、チョーキング、コケ・藻の発生など、さまざまな不具合を引き起こします。

 

外壁の劣化に気が付かないまま放置していると、美観を損なうだけでなく、雨漏りにつながるなどより大きな不具合に発展する可能性があります。さらに、外壁材の欠損・落下により、通行人に危害を加える恐れもあることから、建物を適切に維持・管理するために打診調査が欠かせないのです。

 

また、建築基準法では、特定の建物について打診調査を義務付けています。もし、建築基準法で定められた打診調査の実施対象である建物にもかかわらず、点検や報告を実施しなかった場合、100万円以下の罰金が課せられる可能性があります。

 

関連記事:12条点検とは?対象や詳しい検査項目などを解説

外壁打診調査の対象かを確認するには?

外壁の打診調査は、すべての建物で義務付けられているわけではありません。

 

対象となるのは

  • 定期報告対象建築物である
  • 外壁打診調査対象に該当する

という2つの条件を満たしている建物です。

 

では、それぞれの条件について、詳しく見ていきましょう。

定期報告対象建築物に該当するか

建築基準法では、特定建築物に該当する建物について「特定建築物定期調査」を実施しなければならないと義務付けています。

 

建築基準法第2条で定められている特定建築物は以下のとおりです。

 

学校(専修学校及び各種学校を含む。以下同様とする。),体育館,病院,劇場,観覧場,集会場,展示場,百貨店,市場,ダンスホール,遊技場,公衆浴場,旅館,共同住宅,寄宿舎,下宿,工場, 倉庫,自動車車庫,危険物の貯蔵場,と畜場,火葬場,汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物をいう。

引用元:建築基準法第2条|e-Gov法令検索

 

特定建築物のうち、その用途に使う部分の床面積が合計200㎡以上の場合、「特定建築物定期調査(12条点検)」の対象となります。

 

この特定建築物定期調査の実施対象である建物は、外壁の打診調査の実施義務対象となる条件の一つを満たしているといえます。

 

ただし、地方自治体が独自に指定する特定建築物もあるため、建築基準法で定められているかだけで判断するのは危険です。

 

一般的な住宅のような規模では当てはまらないケースが多いですが、建物の所有者・管理者の方は、建築基準法と各都道府県庁のホームページで所有している建物は特定建築物に該当するか確認しましょう。

外壁打診調査対象に該当するか

特定建築物定期調査の実施対象であり、なおかつ以下の2つの条件を満たしている場合は、外壁の打診調査が必要です。

 

  • 竣工や外壁改修から10年以上経過している
  • 過去3年以内に打診調査を実施していない

 

ただし、条件を満たしていなくても、外壁に異常が見つかったときは打診調査を実施するようにしましょう。

 

外壁調査のタイミング

外壁の打診調査の実施が義務化されている建物を所有している場合、「いつ打診調査を実施したらいいの?」と悩む方も多いでしょう。

 

建築基準法では、「おおむね6か月〜3年の間隔をおいて、特定行政庁が定める時期」と定めており、具体的なタイミングや周期については指定していません。

 

ただ、先ほど解説した「特定建築物定期調査」は1〜3年ごとに実施・報告が必要であり、なおかつ「目視及び部分打診調査」という点検項目があります。そのため、特定建築物定期調査で打診調査を実施するのが一般的です。

 

特定建築物定期調査の正確な頻度や時期を確認したい方は、管轄の特定行政庁に確認するようにしましょう。

 

特定建築物の全面打診等調査とは?

特定建築物の打診調査のなかでも、建築基準法の定める条件に該当する場合、全面打診等調査を実施しなければなりません。

 

全面打診等調査とは、外壁の一部を打診調査するのではなく、外壁全面を調査して、劣化や不具合を発見することです。とくに、壁の一部が落下して、通行人に危害が及ぶ可能性がある建物に対して、全面打診等調査が義務付けられています。

 

では、特定建築物に該当する建物のなかで、どのような条件に該当すると全面打診等調査が必要となるのか見ていきましょう。

調査対象となる仕上げ材

「タイル」「石」「モルタル」のいずれかを外壁材として使用している建物は、全面打診等調査が必要です。

 

たとえば、タイルや石はデザイン性が高く、耐久性に優れているという特徴がある一方で、施工不良や経年劣化により剥離・落下する恐れがある方です。

 

また、水・セメント・砂を混ぜ合わせてできたモルタルは、意匠性が高いことがメリットですが、ひび割れが起こって剥がれやすい外壁材です。

 

そのため、「タイル」「石」「モルタル」を外壁材として使っている建物は、通行人に危害が及ぶ可能性があるため、、全面打診等調査の対象となります。

全面打診等調査が必要になるケース

建物に使用している外壁材の種類にかかわらず、建築物の前面かつ、壁面直下の地面に公道や不特定多数の人が利用する私道・構内道路・広場がある壁についても、全面打診等調査の対象となります。

 

また、竣工や外壁改修から10年以上経過している場合も対象となります。

 

ただし、竣工や外壁改修から10年以上経過している建物でも、3年以内に外壁改修をしていたり、全面打診等調査の実施が決まっていたりする場合は、急いで調査を実施しなくても揉んだいありません。

 

なお、こちらの条件に該当する場合でも、歩行者などに対する安全確保の対策を講じていると認められる場合は、全面打診等調査が不要となります。

 

打診調査と赤外線調査による外壁調査の違い

ここまで、打診調査のことを解説しましたが、外壁調査の方法は、「打診調査」と「赤外線調査」が主流です。また、最近では「ドローンを使った赤外線調査」も増えており、調査方法ごとの違いを見ていきましょう。

打診調査

打診調査とは、ハンマーや打診棒といった専用器具で外壁を叩き、叩いたときの音によって劣化や不具合を見つける方法です。打診調査を実施するときは、目視調査も実施可能であるため、音と目の両方からチェックできることで、精度の高い調査ができます。

 

たとえば、外壁のわずかなズレは赤外線調査で見つけにくいですが、打診調査では見た目や異音によって発見できる可能性が高いといえるでしょう。

 

しかし、建物の周りに足場を組み、作業員が小範囲ごとに外壁を叩いて調査していくため、作業工数が多くなって費用が高くなりやすいことがデメリットです。また、高所作業になるため、作業員が危険を伴うことも懸念点でしょう。

 

メリット
  • 打診調査と目視調査が同時に実施できる
  • 赤外線調査では見落としがちな劣化や不具合を発見しやすい
デメリット
  • 足場が必要
  • 手作業による調査のため、工数がかかる
  • 費用が高額になりやすい
  • 足場が組めない場所での実施はむずかしい

赤外線調査

赤外線調査とは、赤外線カメラを用いて建物の外壁を撮影し、データを解析して異常を発見する方法です。

 

赤外線調査は、地上から実施するため、非接触で安全な調査が可能です。また、足場が不要であり、短時間で広範囲を調査できることから、点検にかかるコストも抑えやすいことが魅力です。

 

ただし、内部の異常や見た目ではわからない細かな異常については見落とす可能性があり、打診調査よりもやや精度が低いとされています。

 

とくに、赤外線カメラは外壁に対して垂直に撮影する必要があるため、高所の点検は精度が落ちやすくなるでしょう。

 

メリット
  • 非接触調査が可能
  • 足場やクレーン車を用意しなくてもよい
  • 打診調査よりも短時間で実施できて費用を抑えやすい
デメリット
  • 高層階になるほど精度が落ちやすい
  • 外壁が濡れているときや、真冬の調査では精度が落ちる可能性がある

 

ドローンを使った赤外線調査

近年では、打診調査や赤外線調査のほか、ドローンを使った赤外線調査が注目されています。

 

赤外線カメラを搭載したドローンを使って外壁を撮影し、撮影したデータを解析する方法であり、短時間で広範囲を調査できるうえに、足場が不要であるため、調査にかかる工数が減ってコストを抑えやすいことが特徴です。

 

さらに、高層階になるほど精度が落ちるという、赤外線調査のデメリットも解消できます。

 

ただし、屋外でドローンを飛ばす行為は、航空法や小型無人機等飛行禁止法など、さまざまな法律・条例でルール化されており、建物の場所や飛ばし方によってはドローンを使用できないケースがあります。

 

メリット
  • 調査コストを抑えやすい
  • 短時間で調査できる
  • 高精度の調査が可能
  • 安全性が高い
デメリット
  • 法律や条例の関係で、ドローンを飛ばせないことがある
  • 調査の可否が天候に左右されやすい

 

外壁調査の基本的な流れ

定期的に外壁調査をおこなうことで、外壁の劣化状況を確認することができ、適切なタイミングで適切なメンテナンスが可能となります。とはいえ、外壁調査を依頼した経験がなく、実際にどういった流れで調査がおこなわれているのかわからない方もいるでしょう。

 

ここでは、外壁調査の一般的な流れについて詳しく紹介します。

外壁調査を依頼する業者を探す

まずは、外壁調査を依頼する業者を探すところからはじめましょう。業者によって、対応している外壁調査の種類に違いがあるケースもあるので、事前にどのような調査方法なのか確認しておくことをおすすめします。

複数の業者から見積もりをもらう

ひとえに外壁調査といっても、調査方法や業者によって費用が異なります。そのため、できれば複数の業者から見積もりを取るようにしましょう。

 

相見積もりをすることで、相場感を把握できるだけでなく、業者の比較がしやすくなるといったメリットがあります。同じ調査方法であっても、業者によって金額が異なるケースもあることから、できるだけ費用を抑えたい方は、比較検討することが大切です。

外壁調査を依頼する業者を決める

複数の業者から見積もりをもらったら、見積書を比較して、どこの業者に依頼するか決めていきます。その際、金額だけで業者を選ぶのは、おすすめしません。金額が安くても、その分調査がずさんであれば意味がないことから、しっかりと調査の対応をしてくれる業者に依頼することが大切です。

 

そのため、業者を選ぶときは、見積もりだけでなく、信頼できる業者かどうかを見極めましょう。なお、実際に調査を依頼したユーザーの口コミやレビューを確認するのもおすすめです。

外壁調査を実施してもらう

複数の業者から見積もりをもらい、実際に依頼する業者が決まったら、実際に外壁を調査してもらいましょう。調査方法によって、実際の調査にかかる時間は異なります。打診調査であれば、足場が必要となるので、実際の調査以外にも時間がかかってしまいます。

 

一方、赤外線調査であれば、足場を組む必要がないことから、建物の大きさによっては1日で調査が完了するケースも少なくありません。

 

なお、ドローン調査の場合も、足場が必要なく、比較的スピーディーに調査できることから、作業時間が短く済むでしょう。

調査報告を確認する

外壁調査を実施してもらったら、業者から調査報告書を受け取りましょう。調査報告書には、どのような調査方法が実施されたのかに加え、外壁の状態が細かく記載されています。

 

また、外壁の状態によっては、補修方法や対策などが書かれていることもあるので、しっかりと確認しましょう。なお、調査報告書の読み方がわからなかったり、疑問点があったりする場合は、担当者に確認することをおすすめします。

まとめ

今回は、外壁の打診調査について解説しました。

 

外壁の打診調査は、建築基準法で定められている法定点検の一つです。

 

なお、外壁の打診調査の対象となるのは

  • 定期報告対象建築物である
  • 外壁打診調査対象に該当する

という2つの条件を満たしている建物です。

 

さらに、打診調査を義務化している建物のうち、以下の条件を満たす場合は全面打診等調査の実施も定めています。

  • 「タイル」「石」「モルタル」のいずれかを外壁材として使用している建物
  • 建築物の前面かつ、壁面直下の地面に公道や不特定多数の人が利用する私道・構内道路・広場がある壁

 

所有している建物によっては、法律にしたがって外壁の打診調査を実施しなければならないため、きちんと法律を理解することが大切です。

 

また、外壁の打診調査のほかにも、赤外線調査やドローンを使った赤外線調査なども外壁調査の方法もあるため、特徴やメリット・デメリットを理解したうえで、点検方法を決めましょう。

 

関連記事:外壁調査とは?必要性や調査方法、業者に依頼するときのポイントを解説

 

また、ドローン業者にお見積りやご相談を希望の方はお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

掲載をご希望の事業者さま