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日本の橋梁は、高度経済成長期に建設されたものが全体の30%を占めており、これらは建設から50年以上が経過しています。さらに、自然災害のダメージを受けたり、大型車両がたくさん通ったりと、厳しい使用環境にあることから、点検を実施して適切なメンテナンスを行わなければなりません。
実際に、橋梁の利用者や周辺を通る人の安全を守る、長寿命化実現を目指すといった理由から、法律で5年以内の定期点検が義務化されています。
ただ、橋梁の点検は多くの人手が必要で時間がかかる、危険であるといったことから、ドローンで実施するケースが増えています。
そこで今回は、橋梁点検にドローンを活用できるのか、メリット・デメリットなどを解説します。
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橋梁点検とは、定期的に橋梁を点検することです。点検を実施することで、異常や不具合を早期発見し、大きな事故やトラブルが発生する前に適切なメンテナンスを実施できます。
ここでは、橋梁点検の必要性と課題を解説します。
橋梁は大型車両や鉄道の通行、地震発生時の揺れなどで負荷がかかっており、年数が経つごとに劣化が進行しています。
橋梁の劣化が進むと、負荷に耐えられなくなって一部が破損するなどの事故が想定されるため、事故が発生する前に、点検・補修を実施し予防保全の体制を充実させることが重要です。
日本には、2mを超える橋梁が全国で72万箇所あり、国や自治体などで点検・補修が実施されています。
しかし、橋梁は高所や海上など、点検がむずかしい場所に設置されているものが多いことに加え、点検を実施できる技術者が減少していることから、さまざまな課題が浮上しています。
橋梁点検の主な課題は以下の3つです。
このように、普段何気なく使っている橋梁は、点検・補修についてさまざまな課題を抱えているのです。
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近年、橋梁点検について複数の課題が浮き彫りになっています。そこで、橋梁点検のさまざまな課題を解決できるとして、ドローンによる橋梁点検が注目されています。
従来の橋梁点検では、点検用車両やはしご、ロープなどを使って実施するのが一般的でした。
しかし、ドローンは小型で安定した飛行が可能であることから、ドローンに搭載したカメラで橋梁を点検する方法が拡大しつつあります。ドローンを使った橋梁点検なら、作業員が近づいて点検するのがむずかしい箇所も遠隔操作が可能であり、なおかつ短時間で点検が完了します。
さらに、画像や映像の処理技術が発達していることも、導入が拡大している理由の一つです。ドローンで撮影したデータを画像処理やAI技術を用いて、オルソが増加や3Dモデル化でき、撮影した画像の解析なども簡単にできるのです。
ドローンを使って橋梁点検ができることはわかりましたが、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、橋梁点検にドローンを活用するメリットを解説します。
橋梁点検におけるドローンの活用は、人手不足の解消につながることがメリットとして挙げられます。
点検車両やロープなどを使う従来の方法では、一つひとつ手作業で点検が行われるうえに、安全確認を慎重に行う必要があることなどから、多くの人手が必要でした。
しかし、ドローンで橋梁点検を実施すれば、実際の点検箇所に作業員が行く必要がありません。地上の安全な場所から、ドローンを飛ばして撮影するため、作業員の数を大幅に減らすことができるのです。
そのため、人材が不足している現場でも効率的に作業を進められます。
ドローンによる橋梁点検は、人件費の削減にもなります。
先に解説したとおり、作業員が直接点検を実施しなければならない従来の方法と比較して、ドローンによる点検なら地上からドローンを操作するだけで済みます。そのため、ドローンを活用することで、点検に必要な作業員の数を大幅に削減でき、結果的に人件費の削減につながるのです。
また、作業時間の短縮も期待できることから、人件費以外のコストカットも期待できるでしょう。
点検車両やロープを使う点検方法の場合、小範囲を点検するのにもかなり時間がかかります。準備や安全確認などの時間を考慮すると、効率的な点検とは言えません。
しかし、ドローンを活用すると、地上から操作してドローンを飛ばすだけなので、広範囲を短時間で点検可能です。
従来の点検方法では、1日1件しか対応できなかったケースでも、ドローンを活用すれば1日で複数件の点検を実施できる可能性があり、点検時間の短縮と効率化が目指せます。
ドローンは高精度のカメラを搭載しており、人間の目では見落としがちな微細な亀裂や損傷も検出することが可能です。
従来の点検方法では、人が実施していたため、場所によっては隅々まで点検するのがむずかしいケースもありました。また、手作業による作業となるため、作業員によって点検の精度に差がある可能性もあります。
一方、ドローンなら人による点検精度の差は生じません。さらに、人が点検できない危険な場所もカメラで撮影できるため、隅々まで点検でき、結果的に従来の方法と比較して精度の高さが期待できます。
橋梁点検をドローンで実施することで、作業の安全性向上につながることもメリットです。
高所作業や危険な場所での点検でも、ドローンを使えば作業員が直接現場に入る必要がなくなることから、落下事故のリスクを大幅に軽減できます。
このように、ドローンによる橋梁点検は、作業精度やコストカットだけでなく、作業員の安全性向上の点からもメリットがあるのです。
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ドローンを活用した橋梁点検はさまざまなメリットがあることがわかりましたが、一方でデメリットもあります。
ここでは、橋梁点検にドローンを活用するデメリットを解説します。
ドローンは風や雨などの悪天候に弱いため、点検作業が天気に左右される可能性があります。
風速8m/sを目安に飛行中止となり、天候を予測して点検実施日を決めなければなりません。また、点検途中で雨や風が強くなったら、途中で点検を中止することもあるでしょう。
とくに海沿いや高所では強風になる可能性が高く、点検実施日が限定されるケースも少なくありません。
ドローンの使用は、法律や条例に準拠する必要があり、以下のとおりさまざまな法律や条例の規制対象となります。
たとえば、航空法では飛行禁止空域が定められていたり、飛行方法に関して規制が設けられたりしています。申請を行い、許可を得られれば飛行可能となるケースもありますが、場合によっては橋梁の点検をドローンで実施できないケースがあります。
また、申請を出して許可を得るまでに時間がかかることも少なくありません。申請が必要になり、慌てて申請を出しても、点検日に間に合わない可能性があるため、ドローンに関する法律や条例にはどのようなものがあるのか確認し、計画的に準備することが大切です。
関連記事:ドローンの飛行に申請は必要?条件や申請方法、ポイントを徹底解説
橋梁の点検をドローンで実施したいと考えていても、そもそも使えない可能性があることもデメリットの一つです。
法律や条例による規制で飛行を制限されるケースがあることに加え、橋梁の位置や形状によっては点検できないこともあります。
とくに、ドローンを飛ばすには電波が必要となるため、電波が入らない場所では使用できません。
橋梁でドローンを点検するときは、画像や映像から異常や劣化具合を判断します。高性能カメラを使って点検するため、精度の高い点検結果が期待できますが、橋梁に直接触れたり、見たりする従来の打音点検を実施できないことはデメリットとなります。
というのも、打音点検なら、橋梁を叩いたときのわずかな異音から不具合を見つけられることがありますが、ドローンは表面化している不具合しか見つけられないからです。また、打音点検をする際、作業員は橋梁を目視でチェックしていくため、カメラでは判別しにくいわずかな傷や損傷も見抜けます。
そのため、橋梁点検では、ドローンと打音点検を組み合わせることで、より精度の高い点検が期待できます。
ドローンの操縦は技術が必要であり、とくに橋梁点検は難易度の高い飛行が求められます。
たとえば、構造物にぶつからないようにするのはもちろん、遠隔操作の技術も求められます。
橋梁点検をドローンで実施することは、簡単そうに見えてかなり難易度が高いため、信頼できる業者・操縦士を探す必要があるのはハードルといえるでしょう。
ドローンで橋梁点検を実施したいと考えている方のなかには、「実際、いくらかかるの?」と費用面について気になっている方も多いでしょう。
結論として、橋梁点検は1日あたり60万円~が相場となっています。橋梁点検では、狭いところでもきちんと撮影できる性能の高いドローンが必要となることから、外壁や屋根の点検よりも高い相場となっています。
なお、橋梁の規模や場所などでも費用は変わるため、詳細な点検費用については、業者に問い合わせてみるのがおすすめです。
ドローンで橋梁点検をする際のポイントを見ていきましょう。
ドローンで行う橋梁点検は、画像や映像を撮影し、撮影したデータを解析することで異常を見つけます。
しかし、橋梁の内部に生じているひび割れなど、表面化していない不具合については見落としてしまう可能性があるでしょう。
一方、従来の点検方法である打診点検では、橋梁を専用の打診棒で叩いて、異音から異常を見つけられます。また、打診点検を行うときに、目視によるチェックも行われるため、精度の高い点検が可能です。
このように、ドローンの撮影で見落としがちなポイントについては、打診点検でカバーできるため、点検方法を併用すると精度の高い点検が期待できます。
ドローンによる橋梁点検をスムーズに行うためには、事前準備をしておくことが大切です。
とくに、航空法や小型無人機等飛行禁止法などの法律・条例で事前の申請・許可が求められる飛行については、あらかじめ書類の提出などが必要です。
申請については業者がサポートしてくれることもありますが、依頼者が内容を理解しておくことで、トラブルを軽減できるでしょう。点検の直前になって慌てることのないよう、必要な事前準備を済ませておくことが大切です。
最後に、ドローンで橋梁点検を実施するときの注意点を解説します。
先に解説したとおり、ドローンの飛行はさまざまな法律・条例で規制されています。
ドローン規制に関係する法律や条例は以下の6つです。
ここでは、航空法の内容をピックアップして解説します。
航空法では、以下のとおりドローンの飛行禁止空域と飛行方法について規制が設けられています。
【航空法に記載されているドローンの飛行禁止空域】
【航空法に記載されているドローンの飛行方法に関する規制】
国土交通省の許可を取ればドローンの飛行が可能となりますが、許可の有無に関係なく飛行禁止の場合もあります。
このように、航空法だけでも細かな規制があり、法律や条例に違反しないよう注意しなければなりません。
関連記事:ドローンに関する規制・法律とは?種類や内容、違反した場合の罰則などを解説
ドローンを使うと、安全性の高い橋梁点検が期待できますが、事故リスクがゼロになるわけではありません。
たとえば、ドローンが強風に飛ばされて人や物を傷つけてしまったり、ドローン自体が故障したりする可能性があります。
どのような事故リスクがあるのか理解し、対策したうえで、点検を実施することが大切です。
ドローンで橋梁点検を実施すると、画像・映像のデータ処理に時間がかかることが注意点です。
撮影データの解析にかかる工数が膨大であるため、予想以上に時間がかかることも少なくありません。異常のある箇所を自動で検出する技術は開発途中であり、実用化に至っていないため、基本的には人がデータをチェックすることになるからです。
点検が終わったらすぐにデータを受け取れるというわけではないため、余裕を持って点検日時を設定しましょう。
日本で有力な実績を持つ企業を紹介します。
会社 | 日本ダイヤコンサルタント株式会社 |
URL | https://www.dd-con.co.jp/ |
所在地 | 東京都千代田区神田練塀町300番地 |
設立年 | 1963年1月23日 |
橋梁を中心とした構造物の計画・設計に強い大日本コンサルタントと、地質・地盤の調査・解析に強いダイヤコンサルタントの合併会社。
60年以上の実績と高度な技術サービスを持つ。
会社 | 株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク |
URL | https://www.jiw.co.jp/ |
所在地 | 東京都港区六本木7丁目10-25 中島ビル |
設立年 | 2019年4月1日 |
国土交通省「点検支援技術性能カタログ」に掲載された確かな技術を有する会社。
620橋超(全国47都道府県)の橋梁定期点検の受託実績があり、橋梁点検の知識・経験・実績を有した技術者が全国各地存在。
会社 | 株式会社長大 |
URL | https://www.chodai.co.jp/ |
所在地 | 東京都中央区日本橋蛎殻町一丁目20番4号 |
設立年 | 1968年2月21日 |
1968年創業の老舗企業。
本州四国連絡橋をはじめとして日本各地の長大橋や特殊橋の設計実績を持つ。
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今回は、橋梁点検をドローンで実施できるのか、メリットやデメリット、費用相場などを解説しました。
日本には数多くの橋梁がありますが、作業員不足や高所作業による危険を伴うことなどが問題視されており、従来の点検方法によるデメリットを解決できるとして、ドローンによる点検が注目されています。
ドローンで橋梁点検を実施することで、人手不足の解消や点検時間の短縮、安全性の向上などが期待できます。
橋梁点検で、人手不足や費用面などで悩んでいる方は、ぜひ今回の記事を参考にドローンによる橋梁点検の実施を検討してみてください。
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